墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「初公開!新発見の武人埴輪 埴輪が語る古墳時代の東海村」講演会 @茨城県那珂郡東海村

令和2年2月2日、埴輪の講演会を聴きに茨城県の東海村へ出かけた。

 

下車した常磐線の「東海」駅。

 

講演会場は「東海村産業・情報プラザ」、駅から100m(写真中央左)

 

200人程入る会場は、ほぼ満席で熱気に包まれていた。

幕が上がると本日の主役がスポットライトを浴びながら登場。

 

明かりがついて、この日の主役の2体。

左が三角巾を被る人物埴輪(現高80.2㎝)で、右が笠を被る人物埴輪(同41.7㎝)

 

どちらも平成20年に、石神町の(狭い範囲での)下水道工事中に出土。

その後に、出た場所は径13mの円墳の周溝であることが確認され、小字名から「外ノ内古墳」と命名されている。
平成30年に報告書が出来たばかりでこれまで公開されておらず、今回のお披露目もこの日だけ。

2021年7月にオープンする複合施設「歴史と未来の交流館(仮称)」で常設されるようだ。

交流館については下記を。

https://www.vill.tokai.ibaraki.jp/material/files/group/24/59d5c9800e410.pdf

 

上記の埴輪の左右にも、1体ずつ舞台に並んでいた。

こちらは茨城県指定文化財の人物埴輪(舟塚1号墳出土・現高78.5㎝)

この日の主役ではなかったが、形も彩色も美しい埴輪であることが遠目にもよくわかった。

会場でいただいた「東海村文化財マップ」に当埴輪の解説が。

三角形の天冠をつけ、三角板の短甲を思わせる文様が全面に見られ、やや誇張した草摺がスカートのように広がって表現される。顔には赤や黒味の着色があり、髪は美豆良に結われ、腕には手甲がつけられている。造りは極めて精巧で、本県を代表する埴輪である。 

 

東海村指定文化財の武人埴輪は動燃東海事業所地内から出土。現高62.5㎝

動きのある姿勢をとっているようだった。

この埴輪も前出のマップに解説あり。

衝角付冑を被り、左腰に太刀をさし、挂甲を着用し籠手を装着している。太刀及び武具には青色顔料が塗られている。6世紀中葉の埴輪と考えられ、県内でも有数の精巧品である。 

 

ちなみに東海村は久慈川河口の南岸に位置し(南に隣接する”ひたちなか市”は那珂川河口の北岸)、それほど広くはない36㎢の村域には99基の古墳が確認されているそうだ。

 

講演会のタイトルは「埴輪が語る古墳時代の東海村~埴輪の世界を読み解く~」で、講師は川村学園女子大学の塩谷修先生。

 

前半は埴輪の起源やその意味についてで、後半が盾持ち埴輪と、埴輪窯とその供給エリアについて。

後半のお話が大変興味深かった。

 

盾持ち埴輪は、古代中国の方相氏(前漢の「周礼」)の思想、つまり鬼を払って墓を守る者、あの世・神仙世界で被葬者を守る者と関連し、その思想は奈良時代の律令にも「方相」として記され、今でも続く節分行事の追儺(おにやらい・ついな)につながっていく(と、理解しました)

 

埴輪窯(埴輪の生産地)については、戸ノ内古墳出土の2体が舟塚1号墳の県指定埴輪と同じ小幡北山型(ひたちなか市の馬渡埴輪製作遺跡や茨城町の小幡埴輪窯跡で生産されたもの)で、小美玉市の舟塚古墳出土の埴輪も同型であるとのこと。

「型」は土の質だけでなく、作り方(上半身・下半身を別々に作る小幡北山型、最初に腕を木芯で作る、つまり焼くと芯部分が中空になる久慈型)の違いに特徴がある。

点在する専門製作地から、かなり広域に埴輪が供給されていることにも興味をそそられた。

講演会終了後に舞台に上がって撮影できる機会が設けられていましたが、自分は帰りの電車の時間が迫っていたので次の機会としました。来年夏に交流館が出来たら再会したいと思います。

 

ホールの外では、いくつかの埴輪が展示されていた。 

力士の埴輪は石神小学校(中道前古墳群?・6世紀代)と伝わるもの。

 

太ももが立派。

 

芽山(かやま)古墳(中道前5号墳・6世紀前半)出土の「太刀を担ぐ軽装武人」

 

この埴輪は、塩谷先生の講演では担いでいるのは弓のようでしたが、見間違い(聞き間違い)かも知れません。

 

肩に残る、担いでいるモノの部分。

 

同じく、芽山古墳(中道前5号墳)からの盾持人埴輪。

 

その後ろには、円筒埴輪片や動物埴輪。

 

 戸ノ内古墳出土埴輪片(形象埴輪・円筒埴輪) 

 

芽山古墳(中道前5号墳)からの、馬(中央)とイノシシ(左)、右は石神小学校からと伝わる犬(?)

 

講演会が始まる前に、近辺の古墳巡りもしました(次回につづく)