昨年から楽しみに待っていた「出雲と大和」展は、期待していた以上に素晴らしい内容でした。その一部を紹介します。
日本書紀の編纂が完成したのが西暦720年で、今年が1300周年とのこと。
主に天皇の事績を記録した正史ですので、古墳時代のボリュームが結構多いことになります。
出雲はその中で主役ではありませんが、天皇の時代より前の神代の時代での舞台となり、また両時代のつなぎ目においては、大和に政治権力を譲る代わりに祭祀を司る役割を得るという「国譲り」を行います。
その「国譲り」が行われた時代は、弥生時代後期から古墳時代の初め頃になるのでしょう。
譲るという表現や、譲る代わりに得た役割の重要性を思うと、出雲が強大な力を持っていたことが推測されます。
出雲は、鉄資源の供給元の朝鮮半島とをつなぐ日本海沿岸の拠点、内海ルートを掌握していました。古墳時代に入って大和から全国へ広がった「前方後円墳」の規格には、葺石の使用などに出雲の墳丘墓の形式が受け継がれます。
今回の展示は圧倒的で、3本束ねの巨木柱の根元や出雲大社の復元模型、荒神谷遺跡から出土した大量の銅剣・銅矛・銅鐸、加茂岩倉遺跡から一括出土した銅鐸などの実物は、古代出雲が持っていた霊力を今も宿しているように感じました。
埋納状況を表したレプリカは撮影可。
会場には四隅突出墓やその出土品などの展示も多数。
一刻も早く出雲を訪ね歩きたくなる内容でありました…
一方、大和のパートも、非常に見ごたえがありました。これまでに訪ねたところもあったので、そのときのことを思い出しながら鑑賞しました。
石上神宮に伝わる神宝、七支刀は東博では7年ぶりの展示。現地へ参拝しても普段は非公開です。
同神宮に伝わる鉄製の大きな盾も2枚。普段の常設展示では1枚が展示されていました。
新沢千塚古墳群の華麗な副葬品も。これも以前は常設展示の一画にありました。
現地はこのようなところ。
”大和編の目玉”のひとつである黒塚古墳から出土した鏡は、実物33面をすべて展示。ガラスケースとの距離が近いので、裸眼でくっきり観察することができます。
4年前に現地でレプリカを見ました。
墳丘の様子。
円筒埴輪は日本最大サイズ・高さ2.5mのメスリ山古墳のものを展示。
これも4年前に橿原の博物館で見ましたが(↓)、やはり巨大!
メスリ山古墳の様子です。
橿原考古学研究所付属博物館からは、埴輪もいくつか。
石見遺跡出土の椅子に座る男性埴輪。写真(↓)も橿原の博物館で撮ったもの。
法隆寺のそばにある藤ノ木古墳の絢爛たる副葬品も展示されていました。
古墳を訪ねたのは5年前。
仏教伝来以降のパートも充実していました。
奈良・石位寺蔵の伝薬師三尊像(石造・浮彫)や、當麻寺蔵の持国天立像(脱活乾漆)など、飛鳥時代にまで遡る大変貴重な仏像を間近で見ることができます。
法隆寺金堂壁画の複製陶板は撮影可。
東博本館では、3月13日から5月10日まで、特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」が開催されるので、プロモーションも兼ねている?
6年前に見事な復元展示を見ました(旧スマホカメラ撮影ですが)
「出雲と大和」展は3月8日まで。一般1600円。おすすめの展覧会だと思います。
東博サイト
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1971
特設サイト
ちなみに東博には1年間有効のメンバーズプレミアムパス(一般5000円)というものがあり、平常展が何度でも見られるうえに、東博の企画展に入れるチケット(本人以外も使用可)4枚がついています。企画展に2人で年2回行けば元がとれるのでお得です。