上野で開催中の クラーナハ展を見に行きました。
サブタイトルのとおり、500年後の「誘惑」の視線を受けてきました。
夜間展示で行ったので博物館前のパネルは画面と背景色が一体。
男の生首を持つ「ホロフェルネスの首を持つユディト」ですが、少し上半身に寄っていて、右手に持つ首の部分は枠外。
入口をはいったところに顔出しパネルもありました。顔が描かれた扉が開閉できるようになっていて、ユディトにもホロフェルネスにもなれます。
Wikipediaでは「クラナッハ」の表記。自分も「ナッハ」の方で聞いたことがありました。
ルカス・クラーナハ(父:1472~1553)は、ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家でデューラー (1471~1528)の同時代人であり、現ドイツ(旧東独)のザクセン=アンハルト州の都市ヴィッテンベルクの宮廷画家でした。同名の息子が父が創って大きくした絵画工房を引き継いでいます。
ヴィッテンベルグ大学神学部で教鞭をとっていたマルティン・ルター(1483~1546)はクラーナハの友人でもあり、宗教改革者として世に流布したルターの肖像はクラーナハが描いています。
2016年から2017年(大阪会場)にかけて開催される”日本初”のクラーナハ展は、1517年の宗教改革から500年というタイミング。ウィーン美術史美術館の所蔵品を中心に、ブダペスト、アムステルダム、リヨン、ワイマール、マドリード、デッサウ、ワシントン、トリエステ、フィレンツェ、ブリストル、台南などの各都市の美術館や、個人蔵の作品も集まっており、貴重な機会となっています。
クラーナハ展―500年後の誘惑|開催中の展覧会|国立西洋美術館
主な作品の情報は主催者TBSのサイトに。
切符売り場横のポスターには「ヘラクレスとオンファレ」(1537年、バンベルク財団)
美女に囲まれ骨抜きになっているヘラクレス。
「ザクセン公女マリア」(1534年、リヨン美術館)
結婚記念の自信に満ちた(?)肖像。
入口脇のスペースには「正義の寓意」(1537年、個人蔵)
こちらの展示は、同じ部屋に現代作家レイラ・パズーキの作品がありますが迫力が強く過ぎるのでチラ見ぐらいにしておいて、オリジナルに集中するほうがよいかと思いました。
裸体の背面の奥行きが見えないベタ黒は、妖しい雰囲気を増幅しているように感じます。
にわか調べですが、ベタ黒背景の肖像画は約1世紀遡って初期フランドル派の画家ヤン・ファン・エイク(1395年頃~1441年)やロヒール・ファン・デル・ウェイデン (1399/1400年~1464年)、ハンス・メムリンク(1430年/1440年頃~1494年)等に見られ、クラーナハより20歳程年上になるダ・ヴィンチ(1452~1519)も「白貂を抱く貴婦人」(1490年頃)などを描いています。が何と言っても、デューラーが背景黒の自画像(1493年,1500年)や裸体像の「アダムとエヴァ(イブ)」(1507)を描いており、かなりの関係があったのではないでしょうか。(こちらのエヴァには妖しさは感じられませんが・・・)
検索していたら出版されたばかりの下記の本がありました。
ドイツ・ルネサンスの挑戦 デューラーとクラーナハ (ToBi selection)
- 作者: 田辺幹之助,新藤淳,岩谷秋美
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2016/10/19
- メディア: 単行本
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クラナーハの描く女性が同じような顔立ちなのは、という疑問も湧きますがそれは各自で(やはり図録を買うべきでしたか・・・)
「誘惑」がタイトルにある本も出ています。
見終わって外に出ると前庭の彫刻がいい雰囲気でした。
「弓をひくヘラクレス」1909年(原型)、ブールデル作
ちょっと光をあてる箇所に工夫をされたほうが・・・
世界遺産となった建物の柱が荘厳でした。