前回のつづき。
稲荷山公園を西側から出たのは、マップ上の西洋館のピンが気になったから。
国道16号を南西に向かうと、道路沿いに大きな西洋館が現れた。
道路から少し高くなった敷地に聳え立つ煉瓦タイル壁の建物。
入間市による説明板があった。
入間市景観50選 No.4 西洋館
大正12年(1923)、石川製糸の迎賓館として建てられた西洋館。煉瓦で造られている外壁は、眺めていると、現代から大正時代にタイムスリップしたような感覚に陥る程、威風堂々としています。
個人のお宅ではなさそうだったので、建物に近づいてみた。
車寄せ風の玄関。
玄関の左側。
その左に平屋の建物が続く。
振り返っての玄関。
玄関右側の壁は、八角形を半分にした平面で外へ膨らんでいる。
玄関ガラス戸には、アールデコ風の装飾が。
建物裏側へ回ってみた。こちらには出窓もあった。屋根が複雑な形状をしている。
表側よりも縦に長い窓が並ぶ。
軒下は雷紋(らいもん)が。
検索すると入間市のサイトが出て、国登録有形文化財であることや、3月から11月までの期間は第2第4の土日中心に内部も公開されていることを知った(平成30年7月から。一般200円)
詳細な解説ページもある。
http://www.city.iruma.saitama.jp/event/bunkazai/seiyokan_sekai.html
上記によれば、施主は「石川組製糸」を明治26年(1893)に創始した黒須村出身の石川幾太郎。代々続いた製茶業から生糸を作る製糸業に進出し、一代で石川組製糸を全国有数の会社にした。一時は武蔵野鉄道(現・西武池袋線)の社長にも就任したそうだ。
海外取引が多くニューヨークにも事務所を置いたが、関東大震災や昭和恐慌、化学繊維の出現で経営不振に陥り、昭和12年(1937)に解散している。
建物の設計は東京帝国大学で西洋建築を学んだ室岡惣七。川越の宮大工・関根平蔵が請け負った。
木造建築で外壁はタイル調の化粧タイル貼り。本館屋根は半切妻造(ビップゲーブル)で洋瓦葺(創建時はスレート葺)、別館は寄棟造で桟瓦葺とし、本館と別館でそれぞれ洋館と和館のイメージを表現した造り。
内部は進駐軍の改造を受けた箇所もあるものの全体に当時の様子を良くとどめ、「部屋ごとに特色のある天井の造形や床の寄木模様、照明器具、玄関ホールの大理石製の暖炉や一木で作られた階段の手すり、海外から取り寄せただろう特注の調度品等からは、当時の石川組製糸の繁栄の様子がうかがえる」とのこと。
これはぜひ再訪しないと・・・
国道16号を挟んで斜向かいには、武蔵豊岡教会。
新築したばかりのような外観だが調べると、2014年に国道拡幅により移築・大規模修繕されてはいるが、大正12年(1923)にウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計した建物だった。サイトの写真では礼拝堂内部は元の姿のままのようだ。
http://musashitoyooka.holy.jp/syo.htm
西洋館から少し離れると、鮮やかな屋根の色が目に入った。
西洋館の裏の丘へ小道があったので行ってみた。
敷地沿いの道から。複雑な屋根の形を味わえる。
さらに細道が続いていたので上ってみる。
いい感じの石段。
秩父方面の山々も見渡せた。
丘の上は空地だらけ。再開発されるのだろうか。
その先には古墳群があった稲荷山公園。
丘の上から北西側の眺め。入間川まで約1km、その支流の霞川までは200mもない。
かつてはここにも古墳があったのではと思いつつ。
振り返った先には、西武池袋線入間市駅のホームがあったが、駅入口までは結構離れていた。