墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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特別展 高麗仏画~香りたつ装飾美 @根津美術館

東京で初開催という高麗仏画の展覧会を見に行った。

 

Koreaの語源ともなっている高麗は、918年に王建(太祖)が建国し、1392年まで470年余り続いた国家。

太祖は仏教を国教としたので多くの寺院が建てられ仏教文化が花開いたが、1259年には元の侵攻に遭い1356年までは属国となっている。そのため現存する高麗仏画は元寇以降のものがほとんどであり、さらには次の李氏朝鮮が儒教を崇拝し仏教を弾圧したため高麗仏画は世界に160数件しか現存せず、そのうち110件は日本に渡っている。

今回の展覧会では26件の高麗仏画が経典や工芸作品とともに展示されている。

展覧会 / 開催中|根津美術館

 

展示室へのポスター。

 

展覧会は、京都の泉屋博古館との共同企画で、昨秋に京都で先に展覧会が開催されている。

泉屋博古館や京都・大徳寺が所蔵する「水月観音像」や、ポスターにもある根津美術館所蔵の「阿弥陀如来像」、鎌倉・円覚寺所蔵の「地蔵菩薩像」や大阪・法道寺所蔵の「阿弥陀三尊像」など、日本の仏画とは少し趣が異なる名品を目にすることができた。

 

描かれた時期は13世紀から14世紀。日本では鎌倉末期から室町初期になる。

お地蔵さんが帽子を被っていたり、阿弥陀三尊が右から来迎していたりと、図像的な違いもあるが、原色をカラフルに使っていたり、截金を用いずに金泥で線を描いていたりと、技法の違いも見られる。

展覧会のサブタイトル、”香りたつ装飾美”のとおり、衣服などに華麗な細かい装飾がなされていて素晴らしい。

画面に余白を残さないという傾向もあるようで、広島・不動院の「万五千仏図」は一見普通の観音菩薩像だが、よく見ると画面全体が小さな仏で埋め尽くされていて驚いた。

 

会場内の様子は、下記のインターネットミュージアムで垣間見ることができる。

特別展 高麗仏画 香りたつ装飾美 | 取材レポート | 美術館・博物館・展覧会【インターネットミュージアム】

www.youtube.com

 

館内の一画では、興福寺中金堂再建を記念した「再会 興福寺の梵天・帝釈天」という特別展示もあった。

1202年に定慶(運慶の父の康慶の弟子)が彫った両像はもともと興福寺にあったが、廃仏毀釈の折に寺から離れて今は根津美術館が所蔵している。

ガラスで隔てられてはいるが、”等身大 ”ほどの立像に会話ができそうなほど近い距離で対面できる迫力の展示だった。

 

どちらも3月31日までの展示。一般1300円(他の常設展も含む)

次回も魅力的ですが、高麗仏画展もおすすめします。

 

いつも落ち着くアプローチ。

 

表参道駅へ戻る途中、昨年8月に改装終えたみゆき通り沿いのヨックモック。

 

ショーウィンドウは春の盛りになっていた。

シャセリオー展~19世紀フランス・ロマン主義の異才 @国立西洋美術館

上野の国立西洋美術館で「シャセリオー」展を見ました。 

 

国立西洋美術館の公式サイトなどによれば、テオドール・シャセリオー(1819~1856)は19世紀のフランスで、印象派が華ひらく前のロマン主義を代表する画家。

弱冠11歳で古典主義の重鎮・アングルに弟子入りし16歳でサロンに入選するほど腕を上げましたが、その後ドラクロワに影響を受けてロマン主義へ向かいます。アルジェリア旅行などを経て東方を主題とする作品も多くオリエンタリスム(東方趣味)の画家にも数えられるとのこと。

惜しくも37歳で病没しましたが、 数歳下となるギュスターヴ・モロー(1826~1898)やピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824~1898)らに大きな影響を残しています。

 

ルーブル美術館所蔵品を中心に、シャセリオーだけでなく師や影響を与えた画家たちの作品も並ぶ、日本初の回顧展となるそうです。

 

入場券売り場の隣のポスターは16歳で描かれた自画像。

 

※以下の2枚の写真は展覧会主催者から提供された公式写真です(内覧会へ行く機会がありました)

 

ポスターに一部が拡大して使われている「カバリュス嬢の肖像」(1848年・カンペール美術館所蔵)は、当時のパリで最も美しい女性といわれていた女性を描いています。手に持つ花束はスミレ、髪につけられた生花は水仙とのことです。

 

横幅2mを超える「泉のほとりで眠るニンフ」(1849年)のモデルは、画家のお相手でもあった社交界の華、アリス・オジー。

時代のお約束としてニンフに見立てられていますが、体温が感じられるほどに生々しいオーラでした。

左の方の後ろに、構図の似たクールベの作品が架かっています。

 

古典主義アングルの確かなデッサンの力に、ロマン主義ドラクロワの色彩が加わるとどうなるのかが、シャセリオーによって具現化されていることを知りました。

 

代表作であったであろう、会計検査院の大階段壁画(1844~1848)が、パリ・コンミューンの騒乱で焼失してしまったことは非常に残念であり、37歳で夭逝しなければ、その後の近代絵画の歴史にも、大きな足跡を残していただろうと思われました。


会期は5月28日までです。