墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「建築の難問 新しい凡庸さのために」 内藤廣 著

 今年の7月に発行されたばかりの本でした。

 

著者の内藤廣(1950~)は早稲田大学で吉阪隆正に師事し、菊竹清訓事務所を経て独立事務所を構え、その後に東京大学教授、3.11後の数多くの復興委員会に加わった建築家。

表紙の写真は高田松原津波復興記念公園の追悼・祈念施設。著者が手掛けた作品は、「海の博物館」「安曇野ちひろ美術館」「牧野富太郎記念館」や「東京メトロ銀座線渋谷駅」などで、著書も多数。

 

構成は、今年の日本建築学会文化章を受章された真壁智治氏が提示した次のような問いに対して一つずつ答えていく、という形式になっています。

 建築は世界とつながれるのか

 建築で人は幸せになれるのか

 建築は芸術か

 建築を愛しうるか 等々

どれも問いとしては難しく深いものばかりですが、和解、相互理解、橋渡しという「解決の方向」が具体的な建築の事例とともにわかりやすく提示されていると思いました。

商品としてのプレハブで量産される住宅マーケットの問題、震災復興における土木と建築の溝の問題、新国立競技場の問題など、具体的な”難問”に対してのコメントもありました。

 

解決策が明快に示されているわけではありませんが、問いを発して、それを考え続けていくことの大切さがわかったように思います。

 

ちなみに副題の「新しい凡庸さ」は真壁氏の以下の問いに含まれる言葉でした。

「新しい日常」が喧伝されている。しかしこの言葉はその場しのぎの印象が強く、大きく未来を描くだけの力がない。そうではないより大きな枠組みで射程の長い「凡庸さ」という言葉を提起しうるか。

 

特に”建築好き”ではない方々にもおすすめの本だと思います。