墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「土偶を読む~130年間解かれなかった縄文神話の謎」 竹倉史人著

こちらは読み終えたばかりの本ですが、最高に面白かったです。 

 

博物館や資料館で何度も見てきた縄文時代の土偶ですが、自分は本や博物館での解説にあるように、土偶は妊婦を表現しているのだと思ってきました。

縄文時代での出産は命懸け残る大変さだったので、お産がうまくいくよう願いが込められたものだったのではという想像にもとづきます。

 

ところが。

表紙の写真(中空土偶の頭部=栗の実)でネタバレになっていますが、著者は土偶のモチーフは縄文人の生命を育んでいた主要な食用植物であり、土偶の造形のデフォルメはきわめて写実性に富むものであったことを”解明”しています。

 

ハート形土偶、合掌土偶・中空土偶、山形土偶、みみずく土偶、星形土偶、縄文のビーナス、結髪土偶、刺突文土偶、そして遮光器土偶と、代表的なすべてのタイプの土偶に、さまざまな食べ物の形が気持ちのよいほどぴったりと当てはまっていきます。

植物を中心としたそれらの食べ物に手足がつけて人体のような形をつくった、という著者の説に強い説得力を感じました。

縄文時代、食べられるものが手に入るか否か、今まで採取できていたものがこれからも採取し続けられるかどうかはまさに生死を分かれ道であったと思います。

それが明日も来年も続いてくれという願いは、非常に強いものだったであろうことは想像に難くありません。

 

著者は貝塚などの遺跡出土物などから、それぞれの形の土偶が多く出土した地域とその時代によく食べられていたであろう植物・生き物との関連までしっかりとフォローしていきます。

 

それぞれのタイプの土偶がプロファイリングされていく様子は推理小説を読んでいるよう面白かったです。

 表紙のタイプ以外のもののモチーフが何か、想像しながらページをめくっていくのがよいと思います。

 

著者は考古学者ではなく、宗教学や社会理工学を研究されている人類学者。

まもなく教科書の土偶の説明は書き換わってしまうのではと思えました。

 

著者の主催する研究所のサイトはこちら。 

NHKのインタビューもリンクされています。