墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「サハリン島 上・下」  チェーホフ著、中村融 訳

サハリン島に関する書物の原典は、このチェーホフの旅日記であることを、今回初めて知りました。

 

岩波文庫の新品はアマゾンでは結構高く出ていますが、以前に東京・八重洲ブックセンターの文庫コーナーにあって定価の上巻700円・下巻660円(税別)で購入。

第一刷は1953年の発行で、購入したのは2009年発行の第九刷。

少しずつ(途中で長いブランクも入れて)読み進めて最近最後の第23章を読み終えました。

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チェーホフ(1860~1904)は、30歳の1890年の4月から12月にかけて、単身で当時の流刑地サハリン島を訪れて住民、つまり囚人や移住者たちにインタビューを行い、自らが作ったカード(台帳)に記録していきました。当時16000人の人口で、作ったカードは8000枚前後になるそう。単行本として刊行されたは1895年。

日本での同年代だと森鴎外(1862年生)が「舞姫」を発表した頃(1890)ですね。

 

本の内容、つまり当時のサハリン島に生きる人々の生活は非常に苛酷であり、前回エントリの未来地獄のようなSF小説が実はチェーホフの記録が下敷きになっていることがよくよくわかりました。(なかなか読み進められなかったのも、そういう話が次々に出てくることもありました)

結果としてこの著作は、ロシア監獄制度の改善に大きく寄与したのだそうです。

 

基本的人権が無い、或いはそれが希薄な場所は、今も世界のあちこちに存在しているとは思いますが、その思想の価値の尊さを改めて認識する一冊でもありました。