墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「サハリン島」エドゥアルド・ヴェルキン著、北川和美・毛利公美 訳

ロシア・アヴァンギャルド的な表紙デザインにも惹かれて、何気なく手に取った(図書館で借りました)本ですが、実に壮大なスケールの疑似世界が広がっていました。

 

作者のエドゥアルド・ヴェルキン(1975~)は旧ソ連に生まれ、児童向けSFで多数の受賞を受けた作家で、2018年に刊行された本書はこの10年で最も優れたロシアSFとして高い評価を得ているそうです。

ちなみに、あとがきには日本の作家から影響も受けたことも触れられていました。

 

舞台はサハリン島ですが時代は近未来。

北朝鮮の暴走から始まった世界核戦争後に唯一残った日本”帝国”で未来研究をする日本国籍ロシア系女性主人公がサハリン島を訪ね歩く、というロードムービー的物語。

訪ね歩くといっても、そこは地獄のような危険な絶望世界。物語後半はSFX満載のアクション映画を見ているようで、非日常の極致を味わうことができます。

日本人作家ではとても書けない言葉のオンパレードで目まいがしますが、ともかく圧倒的です。

自分が受けた印象としては、かなり以前に読んだ村上龍の「歌うクジラ」の世界が思い起こされました。

ネタバレになってしまうかも知れませんが読後感は明るい(?)ので、おすすめしたい一冊です。