7月10日の土曜日、 建築家の石上純也氏が手掛ける”庭の屋根”を見に行きました。
東京都等が主催、ワタリウム美術館が企画に携わるパビリオン・トウキョウ2021
という9月5日までの催しで、藤森照信、妹島和世、藤本壮介、平田晃久、石上純也、藤原徹平、会田誠、草間彌生という9人がそれぞれ手掛ける9つの”パビリオン”のうちのひとつ。
上記サイトによれば、「新国立競技場を中心とする複数の場所に、建物やオブジェを設置し、自由で新しい都市のランドスケープを提案する世界初の試み」とのことです。
入場無料、いくつかの展示は要予約ですが、「木陰雲」は不要でした。
鑑賞時間:10:00〜18:00
休館日が結構多いので要確認です:7/5、7/12、7/13、7/14、7/19、7/22〜27、8/2、8/10、8/16、8/23、8/30
会場の九段ハウスは靖国神社の近くの一等地に残る邸宅です。北側の道路から。
この洋館は以前公開されたこともありますがその機会を逃してしまいました。今回公開されているのは庭だけです。
門を入って、玄関前の受付を通り、その先の庭へ。
玄関を横目に見ながら。
ここからすぐに”屋根”が始まります。
回り込んでいくと、庭全体にこの屋根が。
元々ある植生を避けるように、孔が沢山開いています。開いている面積のほうが多そうです。
孔の手前にも、孔の向こうにも緑。
天井(?)も柱も漆黒で、「影」のよう。
大きな円筒(奥側が入口)はもともとあるものです。
作者による詳しい解説がありました。
石上純也
木陰雲(Kokage-gumo)
「九段下に昭和2年、実業家の山口萬吉によって建てられた古い邸宅がある。設計には東京タワーの構造計画をおこなった内藤多仲も関わっている。この邸宅の美しく古い庭に2021の夏期限定で、日差しを柔らかく遮る日除けを計画する。
新しく計画される日除けが、歴史ある風景に溶け込むように、新築であるにも関わらず、はじめから古さを含み持つようにと考えた。具体的には、木造の柱と屋根を庭いっぱいに計画し、構造体を焼き杉の技術を用いて焼いていく。様々に火力を調整しながら、杉の表面を炭化させ、場所によっては構造体そのものを焼き切る。庭に広がる木の構造体が、既存の庭に生い茂る老木を避けるように、焼かれながらしなやかに形状が整えられていく。炎で炭化した真っ黒の構造体は、廃墟のような趣もある。新築から廃墟の状態に、瞬時に駆け抜け変化したようでもあり、建築が経年によって得られる移り変わりを一気に獲得したかのようだ。
昭和初期の時代にはまだ存在していなかった周りの高層建築を黒い構造体が覆い隠し、構造体に開けられた無数の穴からの無数の光の粒が、樹木からの木漏れ日と混ざり合う。樹木の間から覗く現代の風景は消え去り、夏の強い日差しは和らぎ、訪れる人々はこの庭のなかに流れる古い時間とともに過ごす。真っ黒の構造体は、夏の午後に老木の間を漂う涼し気な影である。」(石上純也)
Tokyo Tokyo FWSTIVAL スペシャル13
「パビリオン・トウキョウ2021」
同じ石上作品の「水庭」を天地反転させてようなのでは(「水庭」を写真でしか見ていないのに何ですが)
柱の根元は手造りのようなコンクリート塊。
スポットライトのような光。
踏むのがもったいないような石だたみでした。
建物側の様子も。
期間中、建物内は一日3組限定のレストランに。
「木陰雲」を眺めながら、文化財のような洋館での最高のディナーコースを経験できます。
期間限定レストランの名は「メゾンアウル・プロローグ(maison owl PROLOGUE)」
九段ハウスに期間限定レストランがオープン、建築家 石上純也の作品を展示
まだ10時を少し回った時間でしたが、すでにディナーの準備が始まっていました。
シェフは、宇部で石上純也設計に”洞窟レストラン”の設計を依頼した平田さん。
たまたま庭にいたスタッフの方を話をされる場面があったので、ご挨拶することができました。
宇部のレストランノエルはすでに閉めていて、新しいレストランの”建物”が完成するまでの間は東京で仕事をされるとのことでした。
レストランノエルでのコース、最高でした。
レストランノエル Restaurant Noel 山口県宇部市1丁目 - 墳丘からの眺め
メゾンアウル・プロローグの方は7月はすでに予約が埋まっていて、8月は今だったらいくつかまだ、といわれましたが、二の足を踏んでしまいました…(スミマセン)
こんな素晴らしい場所で、作品を鑑賞しながら、平田シェフのコースをいただけるのは、忘れられない経験になると思います。
塀の北側から。
西側の塀。
塀の外からも「木陰雲」は見えていました。黒いので目立たないですが。