主に1930年頃から大戦をはさんで1960年くらいの時代、建築や家具の分野で”モダンデザイン”をリードした国内外7人の作家・作品を扱う展覧会が、汐留のパナソニック美術館で始まっています。
扱われているのは、建築家のブルーノ・タウト(1880~1938)、高崎の実業家・井上房一郎(1898~1993)、インテリアデザイナーの剣持勇(1912~1971)、建築家アントニン・レーモンド(1888~1976)、その妻でインテリアデザイナーだったノエミ・レーモンド(1889~1980)、日系二世で家具デザイナーのジョージ・ナカシマ(1905~1990)、彫刻家イサム・ノグチ(1904~1988)の7人。
内覧会に出られる機会をいただきました。
大村恵理子学芸員による解説付き。
一般ではイサム・ノグチの明かりコーナー以外は撮影不可ですが、以下の写真は内覧会での特別な許可を得たものです。
会場のデザインには、かつて森美術館で「建築の日本展」を手掛けた前田尚武氏が参加。展示パネルは白木の柱と梁で組まれ、導かれる動線は斜めに雁行するという数寄屋建築の雰囲気を取り入れているそうです。
「モダンデザイン」が日本の伝統との親和性の高かったというイメージをこめたとのこと。
実際に展覧会を見て受けた印象は、公式サイト概要にあるとおり、7人の国内外のアーティストの活動をとおして「世界的な建築家やデザイナーが日本建築と意匠に近代性を見出したまなざし」と、「国際的に普及していくモダンデザインを日本の暮らし方や風土になじませようと模索する日本の工芸関係者のまなざし」が密接に重なり合っていたことが伝わってくるように思いました。
最初のコーナーはブルーノ・タウト。
来日は1933年で、商工省工芸指導所(初の国立デザイン指導機関として1928年に仙台に設立)からの招聘。
細かい文字がぎっしり書かれた日記や桂離宮の画帳、都市計画のドローイングの資料のほか、タウトがデザインした椅子や照明器具、煙草入れや手鏡までが展示されていました。
本展全体での出品物の数は170点ほどですが、建築図面や資料をのぞけばその多くが椅子と照明器具。
椅子や照明器具は、モダンデザインの機能美を発揮できる恰好の「対象物」であることもあらためて感じました。
日向別邸の紹介も。
海を見下ろす丘の庭の地下に、どの部屋からも海が眺められるように設計されています(写真は背面が開口部)
現地は一般公開もされていましたが現在長期修復期間中。一昨年の12月に見学できました(室内撮影不可でしたが)
http://massneko.hatenablog.com/entry/2019/02/10/000000
その先には、レーモンド夫妻のコーナー。
夫妻が手掛けた建築の資料や家具などが並びます。
妻のノエミ・レーモンドによる椅子と、夫妻で手掛けた三角椅子。
ノエミ・レーモンド作のフロアスタンドは、欲しくなりました。
レーモンドはフランク・ロイド・ライトのもとで学び、1919年帝国ホテル建設の際に来日。その後日本に留まって開いた建築事務所では、前川國男、吉村順三、ジョージ・ナカシマらが働いていたとのこと。
日系二世のジョージ・ナカシマが日本の木工技術に触れたのは戦時中に抑留された日系人収容所においてだったそうです。
奥は剣持勇の「柏戸椅子T-7165 」
剣持はブルーノ・タウトが商工省工芸指所に来日した際、タウトから直接に家具デザインの指導を受けたそうです。
最後のコーナー、イサム・ノグチの明かりシリーズは、岐阜提灯を”照明彫刻”に発展させたものだそうです。和紙を通した暖かい光。
ノグチはレーモンドや剣持との交流もあったとのこと。
この一画は一般でも撮影可でした。
三田の慶應義塾大学にあるノグチルームの資料も展示されていました。
ノグチ・ルームは4年前にガイドツアーで見学。(撮影可でしたがWEB掲載不可)
http://massneko.hatenablog.com/entry/2016/08/31/173000
それほど広くはない展示会場ですが充実の展示でした。おすすめだと思います。
3月22日まで。一般800円。
1月25日には倉方俊輔氏、2月15日には原研哉氏の講演会もあります。