墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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モエレ沼公園 北海道札幌市東区モエレ沼公園

北海道の旅、3日目の朝は車を借りてモエレ沼公園へ向かった。

昨年夏の展覧会で、この公園がイサム・ノグチの設計であったことを知り、訪ねたいと思っていた。

 

かつては蛇行する河川と沼があったところ、直前にはゴミ処理場であった場所が、広大な公園に生まれ変わっている。総面積は約188.8ha、内陸部(100ha)だけで、TDL(51ha)とTDS(49ha)を合わせた広さになる。ちなみに大仙古墳(仁徳天皇陵)は46ha。

 

イサム・ノグチ(1904~1988)は「全体をひとつの彫刻作品とする」というコンセプトで公園の基本設計を行った。

ノグチが初めて現地を訪ねたのが1988年3月。同年11月に本人の誕生パーティーで公園の2000分の1の模型が披露されたが、なんと翌月末にノグチは急逝してしまう。

それでも札幌市は公園造成の継続を決め、完成していたマスタープランとイサム・ノグチ財団の監修や支援者の協力のもと、翌年から本格的な造成工事がスタートし、すべてが完成したのは平成17年(2005)だったそうだ。

(以下の公式サイトより。このあとに続く説明も)

https://moerenumapark.jp/isamu_noguchi/

 

今回は88歳の父もいたので、中央駐車場(P2) に停めさせていただいた。

まずは目の前のモエレ山へ。両親は麓散策。

 

不燃ゴミと公共残土を積み上げ造成された人工の山で高さは52m(標高62.4m)

 

”登山道”は5ルート整備されている。こちらはゆったり曲線タイプ。

 

頂上間近。

 

頂上は直径約20m。イサム・ノグチの生誕100年にあたる完成年にちなみ、2004cmとしたのだそう。

 

札幌中心街の方向。JRタワーのある札幌駅までは南西に約9㎞。

 

北側の眺め。左に銀色の”テトラマウンド”、右に平たいピラミッドのような”プレイマウンテン”が見ている。

 

P2駐車場方向からのストレートな登り路。右端は”ガラスのピラミッド”

 

北東方向のパノラマ。空が広い!

 

”野外ステージ”(中央の広場)方向への一直線の階段。

 

プレイマウンテン手前の三角形、石と水の広場は”アクアプラザ&カナール”。

 

下山して、アクアプラザ側から振り返ったモエレ山。

 

このアクアプラザの噴水の部分は、慶應義塾大学の新「萬来舎」(建築:谷口吉郎/庭園・談話室デザイン:イサム・ノグチ/1951~52)の暖炉の形態を、そこから続く”カナール”はカリフォルニア州コスタ・メサの彫刻庭園「カリフォルニア・シナリオ」(イサム・ノグチ、1980~82)を参照し、造成しているそうだ。

そういえば、 そんな形の暖炉があった。

 

そこから北側に、”プレイマウンテン”。

イサム・ノグチがまだ20代であったころの1933年にセントラル・パークに造ろうとした構想が、ここで実現された。

 

石段は99段。瀬戸内海の犬島産の花崗岩が使われている。何段か幅広のテラスが巡っているところは古墳の段築を思わせる。

 

てっぺんには四角い石が置かれていた。これも古墳の天井石の雰囲気。

 

石の上からモエレ山を望む。

 

南西側の白い構造物は”ミュージックシェル”、石段の観客席に向かい合う「舞台」

背後の林は三角形。

 

南東側、ガラスのピラミッド方向の林は円形。

 

このようにイサム・ノグチは幾何学的形態を大地に彫刻する「ランドスケープアート」を生み出した。

 

三角や円は、前方後円墳を分解した要素。

古代に墳丘を築いた人々も、ランドスケープアートを実現していたのだと思います。

 

プレイマウンテンの頂上から北東へは、なだらかなスロープが”モエレビーチ”に続いている。親子連れで賑わっていました。

ビーチの後ろの”サクラの森”の中にはイサム・ノグチがデザインした遊具が 126基、置かれているそうだ。

 

どちらへ降りるか迷ったが、やはり”テトラマウンド”へ。

 

直径2mのステンレス円筒が三角錐形に接合された彫刻的な作品。その下の丸い丘と組み合わさるが、それはまさに円墳。

 

「墳頂」からプレイマウンテンを望む。

 

少し引いた位置から、テトラマウンドとプレイマウンテンを。

 

7月末の「美の巨人たち」で、この場所がと取り上げられていた。

 https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/index.html?trgt=20190727

上記の2つの作品についての藤森照信氏によるコメントが興味深かった。

ピラミッドのような山は妻子を見捨てた父親の野口米次郎を、円墳のような丘は米国人の母親のレオニー・ギルモアを、丘を守るような三角錐の円筒はイサム・ノグチ自身を表しているのではないか、というものだった。

 

テトラマウンドの南側の上り斜面を上がると、陸上競技ができるトラックがある。

 

その脇には、お城のような石垣が。

 

 壁に沿って歩くと高さは徐々に低くなり、上部の”野外ステージ”の広場に回り込めた。

 

この公園では様々なことが禁止されているが、環境がしっかり保全されてとても気持ちの良い空間が実現されている。

 

強い日差しだったので木陰に救われた。 前出の番組では公園にベンチが無いことは、どこに座ってもよいことを示すと伝えていた。

 

モエレビーチに向かう園児たち。

 

ガラスのピラミッドに付随するカフェの前には、手入れの行き届いた庭があった。

が、残念ながらカフェは休業日…

 

建物の中の見学はできた。

 

これは、オンファロスという作品(1988年)

靴を脱いで、近寄って鑑賞できる。石の床がひんやりして心地よかった。

 

内側のアトリウムには3つのフロアがあり、イサム・ノグチの展示室もあった(撮影不可)

 

屋上へも上がれる。

 

外から見たピラミッド。

 

土、石、金属、木々、水(25m吹きあがる噴水もあり)、ガラスと、あらゆる素材を動員し組み合わせて造られた壮大な作品であることが感じられた。

訪ねられてよかったです。