7月の三連休の初日、横浜美術館で始まったばかりの「モネ それからの100年」展の内覧会に参加する機会があった。
クロード・モネ(1840~1926)が、大作オランジェリーに取り組み始めたのが100年前になるとのこと。
円形ホールにて30分ほど、学芸員の方のレクチャーを受けてから展示室へ向かった。
クローズアップされたモネの絵の部分と、現代作家との対比はとても興味深かった。
本展の特色はモネの絵画を抽象絵画・現代美術の端緒として位置付けるもので、国内外からのモネ作品25点に加えて、近現代の画家・写真家・アーチスト26人による絵画・版画・写真・映像作品66点が展示されている。
※夜間特別鑑賞会の為、特別に撮影許可をいただいています。
入ってすぐはモネ作品が並ぶ。
吉野石膏所蔵(山形美術館委託)の「テムズ川のチャリング・クロス橋」は、逆光で輪郭が照らし出された機関車の煙が非常に美しかった。
その背面のモネは「霧の中の太陽」1904年・個人蔵。
中央は松本陽子(1936~)の「振動する風景的画面Ⅲ」、右は根岸芳郎(1951~)の「91-3-8」
モネの絵と同じ空間に現代アーチストの作品が置かれるという、大変興味深い見せ方だった。
名古屋市美術館(4/25~7/1)からの巡回だが、名古屋ではモネ作品と現代作家とは別部屋での展示だったようだ。
(smogbomさんのブログより。いつも拝見させていただいてます)
http://smoglog.hatenablog.com/entry/2018/05/10/211322
確かに同じ視界にあると、お互いに影響を与え合うような効果を感じた。
上記の「霧の中の太陽」に正対するのはモーリス・ルイス(1912~1962)による「ヴェール」のシリーズ。
上の縁の滲みが美しい。油で溶いたアクリル絵具を画布に流して沁みこませている様だが謎が残る描き方なのだそう。
その隣には、丸山直文(1964~)による「GardenⅠ」
一見抽象画のように見えるが、しっかり人影が描かれている。
こちらはゲルハルト・リヒター(1932~)による「アブストラクト・ペインティング」シリーズ。金沢21世紀美術館所蔵品。
へらで横方向に塗り重ねられたアルミ板の画面を見つめていると、ぼおっと色が浮かび上がってくる。
ルイ・カーヌ(1943~)による「彩られた空気」
こちらは金網に樹脂絵具で描かれていて、色の影も重なり合う。作家自身がモネの伝統を引き継いでいると発言しているそうだ。
右もルイ・カーヌによる「睡蓮」
左のロイ・リキテンスタイン(1923~1997)による 「日本の橋のある風景」は、鏡面処理の金属板に描かれ、景色を写し込む水面のようだった。
オランジェリーを意識したような曲面壁のコーナーには、モナコの ナーマッド・コレクションの「睡蓮、水草の反映」(右)
左は吉野石膏所蔵(山形美術館寄託)の「睡蓮」
その対面には鈴木理策(1963~)の写真シリーズ「水鏡」
モネ作品と同じく、斜め上から水面を見下ろす構図で対岸の地上は視界に入っていない。写っている蓮、水面に映っている背景の空、そして写真の表面自体とが重なり合って、眼球のオートフォーカスが迷ってしまうような感じになる。
3年前に初台での展示を見た。
最後の部屋の中央には小野耕石(1972~)による「波絵」
画面をよくみると、小さなインクの柱が写真の網点のように無数に立ち並んでいる。視点を変えると色も変化する不思議な作品だった。
奥はアンディ・ウォーホル(1928~1987)
福田美蘭(1963~)による「睡蓮の池」と「睡蓮の池 朝」は、本展のための新しい連作で、展望レストランでガラスに映しだされたテーブルと街が描かれる。具象絵画だが移ろいゆく光を捉える、モネの池を見ているようだった。
マーク・ロスコ(1903~1970)があったのは嬉しい驚き。
左が東京都現代美術館、右が大阪新美術館設立準備室の所蔵品。
モネとの関連については解説板に 「見るものを包み込むような茫洋とした色面の広がり、そして色の層の向こうから溢れ出てくる光の感覚、そこに漂う瞑想性に、モネの作品、とりわけロンドン風景の連作とのつながりを見いだせる」とあった。
他にも多くの現代アーチストの作品がありましたが、モネを介在して作品と接することで、現代作家の作品をより深く味わうことができたように思えました。
「モネ それからの100年」展は9月24日まで。一般1600円。
帰路、みなとみらい駅。