前回のつづき。この日、最後に訪ねた場所。
常見(つねみ)古墳群は足利中心街から南東に3kmほど、渡良瀬川左岸(北側)に散在していた。
目指した山川公園には2基の古墳があった。
こちらは全長9m超という足利市内で最も長い石室を持つ海老塚古墳。
説明板によれば平成2年の区画整理時に移築されたもだが、6世紀後半の築造。
海老塚古墳石室
この石室は、現在地の東方約450mにあった海老塚古墳のもので、平成2年に区画整理事業に伴い、現在地へ移築復元しました。
海老塚古墳は、直径約53m、周囲に周溝を有する2段築成の円墳で、各段の斜面にチャートの割石を積んだ葺石がありました。
内部主体の横穴式石室は、チャートの巨石を積み上げたもので、全長約9.1m、最大幅2.7m、高さ1.5m以上あり、市内で最も長い石室です・
石室内からは、丸玉、桂甲小札、雲珠(うず)、金銅製鈴、長頸瓶などが出土しました。
巨大な墳丘、石室、豊富な副葬品などから、当地方における首長の墓であり、口明塚古墳よりやや古い6世紀後半頃の築造と考えられます。
平成5年6月 足利市教育委員会
石室内でしゃがんで撮った奥壁方向。
横から見た奥壁。
奥壁の後ろから。
そのすぐ前に、口明塚(くちあけづか)古墳がオリジナルの位置に残っている。
南側に回ると石室開口部があった。
説明板。
足利市重要文化財(史跡) 口明塚(くちあけづか)古墳
平成4年6月25日指定
この古墳は、クチア塚とも呼ばれ、直径約45m、三段築成の円墳で、周囲には幅約8mの周溝が巡ります。墳丘2段目斜面には山石と河原石からなる葺石が施され、埴輪も並べられていたようです。
内部主体には山石の巨石を積み上げた横穴式石室で、南向きに開口しています。羨道(玄室にいたる道)は失われていましたが、両袖式で、推定全長8.7m、玄室(遺体を葬った部屋)の長さ約5.4m、最大幅約2.7m、天井高約2.5mで、左右の側壁は持ち送りがきつく造られています。発掘調査の結果、石室内部は後世に撹乱され、副葬品は出土しませんでした。
山中や山麓に小規模な円墳が多い毛野地区の古墳の中で、この古墳は平地にあり、常見古墳群の中の正善寺古墳(前方後円墳103m)、海老塚古墳(円墳53m)についで規模が大きく、これらの古墳とともに、6世紀末頃の当地方における首長の墓と推定されます。
また、山石の巨石を組み合わせた横穴式石室は、天井が高く、市内屈指の規模をもち、貴重であります。
このたびの復元整備では、羨道及び天井石を補充、積み直し、墳丘も元のように盛り、張芝、一部葺石を復元するとともに、周溝を砂利敷で表現しました。
石室開口部左側にあるスイッチを押すと、石室内にライトが点灯し、内部の様子がわかるようになっています。
また、石室内部を見学したい方は下記までご連絡ください。
平成13年3月 足利市教育委員会 連絡先:文化課(電話20-2230)
スイッチを押すと照明がついた。天井高2.5mの大きな石室。
一部葺石が再現された墳丘。
南西側から。
西側に標柱が立っていた。駐車場もあって見学しやすい。
上記の背面の住宅地。これもチャート石か。
正善寺古墳はそこから450mほど南東にあった。
正善寺の境内を目指していくと、墳丘の目の前に出た。
石室が神社になっている。鳥居には弁天窟の扁額があった。
少し下って進むと奥壁の前に祠があったので参拝した。
入口を振り返って。ここがこの日、唯一入室できた古墳になった。
大きな石が積まれた側壁。
逆サイド。
説明板もあった。
正善寺古墳
夥しい群集墳の所在する大沼田、山川の山丘を北に望み、渡良瀬川北岸の低台地に南西面する前方後円墳である。車塚といわれるが、いまはくびれ部に正善寺本堂が建ち、前方、後円の両丘は分断されている。墳丘全長約88m、後円部の径約32m、高さ約5m、前方部の幅約38m、高さ約4mで周湟をもつ。すでに墳丘は墓地化しているが、後円部に南に開口する横穴式石室があり、観音菩薩像などが出土したという。足利地方最大級の後期前方後円墳であり、首長墳としてその存在価値は大きい。
昭和39年7月25日指定 足利市教育委員会
墳頂への階段。
墳頂は普通に墓地だった。
墳頂から見た開口部。
墳頂から北方向の眺め。
実は説明板の文をきちんと読んだのは後からだったので、現地では円墳だと思っていた。
全長88m(口明塚古墳の説明板では103m)の前方後円墳で、削平されたくびれ部に本堂が建っていたとは・・・
郷土資料室でいただいたパンフにあった航空写真。
右手前に後円部、左奥に前方部があり、中央が削られて本堂が建っていることがわかる。
以上で、足利シリーズ終了です。
なお、足利市では11月25、26日の2日間で、史跡や建築物、絵画や彫刻など文化財の特別一斉公開が行われるとのこと。
http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/koukai2017.html
貴重な機会なので、再訪したいと思います。