墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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旧陸奥宗光邸(西宮邸) 東京都台東区根岸

前回のつづき。

JR鶯谷駅から言問通りを渡って枝道を入ってすぐ、区立根岸小学校の近くに明治の洋館が残っている。

住宅用として建てられた洋館では都内最古の現存例のひとつ、旧陸奥宗光邸。

明治16年に購入し、宗光自身は19年から20年にかけて、ここで暮している。

 

陸奥宗光から家を購入した長谷川武次郎氏の子孫、西宮氏が現在も住まわれているので、見学は外観のみ。

 

装飾は少ないが、南面がガラス窓で覆われた瀟洒な建物。

 

詳しい解説板があった。

西宮邸(にしのみやてい:旧陸奥宗光邸)と「ちりめん本」
陸奥宗光とその家族が住んだ屋敷
明治期の外務大臣として日清戦争の講話条約締結や欧米列強との条約改正など日本の外交史上に大きな足跡を残した陸奥宗光(1844~1897)の最後の住まいは、現在の西ヶ原の旧古河庭園です。
しかしそんな華々しいスポットライトが当たる前の雌伏の時代に、宗光はこの邸宅に住んでいました。
陸奥宗光は、西南戦争時に反政府的な行動をとったとして禁固5年の刑を受け明治16年(1883)1月に出獄したあと、同年9月に「一邸地を購得した」のがこの邸宅です。まだここ根岸が、東京府北豊島郡金杉村という地名で、上野の山の下を鉄道が開通したばかりのころです。
明治17年(1884)4月から明治19年(1886)2月まで宗光はロンドンに留学しますが、その留守中、後年「鹿鳴館の華」と称される妻の亮子と子供たちがこの家に暮しました。そして宗光は留学から帰国して明治20年(1887)4月に六本木に転居するまでここで過ごしました。
この建物は住宅用建築として建てられた洋館の現存例としては都内で最も古いもののひとつです。もともとは現存の洋館に和風(内部は洋式)の建物が付属した接客部と、母屋に付属した離れと土蔵2つを持つ生活部からなる和洋館並列型住宅でした。現存する洋館部分はコロニアル様式で建築されており、正面側の1,2階に大きな開口が連続して配置され、各部屋には暖炉が備え付けてあります。陸奥家とのかかわりという点からいうと、玄関を入るとすぐに階段があり、その階段の手摺の親柱には陸奥家の家紋である「逆さ牡丹」が彫刻されています。
明治21年(1888)、宗光は借金返済と息子・廣吉のロンドン留学費用の捻出のため、この家を売却します。

その後明治40年(1907)ごろ、「ちりめん本」を出版していた長谷川武次郎が、自らの住まいと社屋(長谷川弘文社)として買い取ります。
長谷川弘文社による出版事業は、大正、昭和と引き継がれました。現在も、この家には長谷川武次郎のご子孫の西宮氏ご家族がお住まいです。建物内への立ち入りはできません。静かに敷地外部からご見学ください。根岸子規会

 

「ちりめん本」と長谷川武次郎
明治18年(1885)に、長谷川弘文社から出版が始まった「ちりめん本」については、近年ではかなり知られるようになり注目度が高まっています。
「桃太郎」を一冊目とする小型の「日本昔話」シリーズ20冊などは、英語版が流布していますが、他にフランス語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、ポルトガル語など、9ヶ国語の版が確認されています。「桃太郎」の他「舌切雀」「猿蟹合戦」「花咲爺」など、多くの日本人が知っている話が取り上げられています。
木版多色刷りの鮮明な発色の絵が美しく、欧文活字とともに刷られた和紙を何度も手間をかけて縮めて、縮緬(ちりめん)状になっていることから「ちりめん本」と称されています。
一分の隙もない刷り、絹糸の綴じなど、日本の伝統技術と意匠に満ちた工芸品とも言える「ちりめん本」は、その内容と共に、海外で人気を博し、その文化にも広く影響を与えました。
絵は主に小林永濯、鈴木華邨、新井芳宗など当時の高名浮世絵師によって描かれ、文章は、来日していた宣教師やお雇い外国人によるものが多く、中にはヘボンやラフカディオ・ハーンが訳したものもあります。
単発本も多数あり、圧巻はR・ミラーによる「かぐや姫」百ページ。また「寺子屋」「朝顔」などの歌舞伎の題材も貴重。さらにP・ケイラスによる仏教説話「カルマ」「ニルバーナ」も異色です。J・アダンによる「日本の噺家」は、日本の寄席風景を繊細な筆致で描いています。機知に富む仕掛けを試した「八つ山羊」などもあります。
このように多彩な出版物を企画し、海外に向けて出版したのが長谷川武次郎です。英語に堪能で、商法講習所に学び、そこで来日外国人と接触したのでしょう。多くの彫師や摺師と親しく接し、すぐれた「ちりめん本」出版を可能にしました。日本における出版物の、海外輸出の初陣を飾った人物です。石澤小枝子(事項文学者・フランス文学者)
2017年3月 掲示:根岸子規会(地域の皆さんのご寄附により掲示しました)

 

長谷川武次郎の名前は初めて知ったが、「ちりめん本」の世界は非常に興味深く思われた。

http://lib.ouj.ac.jp/gallery/chirimen_01.html

 

2階の瓦屋根の軒先が、建物右から伸びた蔦で覆われている。

 

母屋の洋館の一部と思われるが、蔦の繁茂が激しかった。

 

北側から回り込んでいくとまず目にする光景。

 

見学後、根岸小前の交差点の角にある店で昼食をとった。

野菜カレーは大変おいしかった。

 

ここもかなりのモジャハウス。

 

以前2月に来た時に気になっていた。

 

こちらから見ると、建物の幅はドア一枚。室内はテーブル席もあって意外に広かった。