現代日本を代表する建築家の一人、坂茂 - Wikipedia(ばん しげる)氏の個展を乃木坂へ見に行った。
現在世界各地で進行中の最新プロジェクトのプロセスを通して、坂氏の設計思想と取り組みが紹介される。
チラシに書かれた坂氏の言葉によると、建物現物や印刷媒体でなく「展覧会」として何を見せるかを検討して「施工プロセス」に焦点を当てることにしたという。
坂氏といえば下記のTEDプレゼン(11分)のように、紙製の円筒の管を構造材に用いた建物で著名な方。
だが、今は「木」を素材とした大規模プロジェクトを世界各地で展開しているそうで、会場では建築模型のほかに、動画や構造体のモックアップによって設計・開発・建設のプロセスが示されていた。
最初の部屋は、パリ西郊外のセーヌ川の中の島・セガン島に建設中の音楽ホール「ラ・セーヌ・ミュージカル」の展示。早回しで組みあがっていく建物の動画は、(意外にすわり心地のよい)紙管製の椅子に座って鑑賞できる。
シテ島からセーヌ川を10kmほど下ったところにある。グーグルアースではまだ更地に近い。
精巧な建築模型。
逆側はカットモデルになっていた。
卵形の木造六角グリッド構造の内側には1150席のクラシック音楽ホール。右に帆のように付いているのは太陽方位に合わせて動くソーラーパネル。
ホール内の壁や天井は、波形合板をいろいろに組み合わせて音響効果を高めているそうだ。その部材の展示。
4000人収容の多目的ホールもある。
テラス展示の上を覆うのは、竹田市クアハウス(2018年7月竣工予定)の木組み屋根(を紙管で再現したもの)
そのクアハウスの模型。「1ユニットが4本の材から成るレシプロカル構造の凹凸面を利用して、下部の必要な天井高に合わせて屋根が起伏させられる」そうだ。
上の階の展示室では木組みなどの構造体を見せる展示になっていた。
コルドバのメスキータ - Wikipediaのような(行ったことはないが)柱廊は2018年3月完成予定の由布市ツーリストインフォメーションセンター。
こちらは2018年秋竣工予定の台湾の台南市美術館。
多様な大きさのギャラリーの上が公園としてつながり、その上を「フラクタル日よけ」が覆う。
「フラクタル日よけ」の模型とその影。実際に「立体公園」はこのような影絵に包まれるのだろう。行ってみたい。
スイス・ビエンヌで建設中のスイス時計会社本社。2018年竣工予定。
巨大な木組みで格子状ドームが造られる。
動画で、材の切り出し(見事な製材マシン!)や組み上げの様子が紹介されていて、非常に面白かった。
今年の7月竣工予定の慶応大学SFC教育研究発表棟。
ドームを形成するパネル材にはペーパーハニカムが内部に挟み込まれ軽量化されている。
こちらは富士宮市に建設中の富士山世界遺産センター。 静岡県によるコンペで採用されたもの。
木格子の外壁を持つ"逆さ富士”形の建物で、建物周囲に水盤が巡り、水面に富士山の形が写る仕掛け。内部では地上5階まで螺旋スロープを富士山の映像を見ながら上り、最上階から富士山を眺めることができるそう。
地上5階という大きさの木組みの逆さ富士、ぜひ見たい。
下記の記事によればオープンは2017年末のようだ。
富士山世界遺産センター着工 17年10月完成予定 富士宮|静岡新聞アットエス
行きたい所が増えてしまうと思いますが、おすすめの展覧会だと思います。
7月16日まで。11時~18時、入場無料。