墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「夏の支度と見立て七夕」展 by アートユニットeventum @鎌倉彫 後藤久慶ギャラリー 鎌倉市雪ノ下

前回のつづき。

若宮大路を八幡宮の信号で突き当たって右手の道を50mほど進むと、左手に「鎌倉彫 後藤久慶」の板彫りの看板がある。信号を背にして左側なので八幡宮の敷地内のような場所。玄関のすぐ前を車が往来するのでこのような写真しか撮れなかった。

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看板の右のショーケースにはこんな作品も。右側はビーズに覆われている。

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この場所は、鎌倉彫三代後藤久慶の後藤慶大氏の鎌倉彫ギャラリーだが、6/20から7/5までの期間で、氏と彫刻家の齊藤寛之氏、美術家の小林正樹氏、金属工芸作家の福成三太氏の4人のユニット、eventumに、ゲストとして吉田樹人氏が参加した小品展および展示販売を行なっていた。

 

eventumのサイト(美しい作品写真と情報が豊富)

 

このとき初めて知ったが、後藤氏は鎌倉初期の仏師運慶から数えて29代目となる彫師だった。東大寺南大門の金剛力士像で有名な奈良仏師運慶は、晩年は鎌倉を拠点としたが、その後も脈々と受け継がれた伝統がここにあった。

 

初代後藤久慶作の火鉢。内部は銅製。

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鎌倉彫とは何かについては、下記のサイトがわかりやすかった。

伝統鎌倉彫事業協同組合のホームページへようこそ

鎌倉彫とは、カツラやイチョウなどの木を用いて木地を成形し、文様を彫り、その上に漆を塗って仕上げた工芸品で、鎌倉市及びその周辺地域で作られたものをいいます。

鎌倉彫の期限は、江戸時代の文献に「鎌倉彫は、四條帝の御宇、運慶の孫康運(こううん)の男康圓(こうえん)、陳和卿(ちんなけい)と共に法華堂の仏具を彫りたるを始とす」とあり、遠く鎌倉時代までさかのぼります。

鎌倉時代、中国から禅宗とともに伝来した堆朱(ついしゅ)や堆黒(ついこく)などの影響を受け、工夫をこらしながら木彫漆塗りの技法で仏具を作ったのが、鎌倉彫の始まりです。室町時代には茶の湯の興隆とともに茶道具として大いに珍重されました。

これらの仏具や茶道具の制作に携わっていたのは仏師でした。しかし、明治新政府の公布した神仏分離令は、廃仏毀釈の運動を引き起こし、寺院の衰退から仏師の仕事は激減しました。

この頃、鎌倉では、多くの仏師が転職を余儀なくされる中で、二人の仏師が活躍します。一人は後藤斎宮(ごとういつき)、もうひとりは三橋鎌山(みつはしけんざん)でした。二人は仏像彫刻の技術を生かしながら、新しい活路を鎌倉彫に見いだし、今日の発展の基礎を築きました。

 

繰り返しになるが、運慶からの流れがあったとは驚いた。しかも激動の明治期に「ビジネスの中心軸を移動」して経営者としても成功されている。

上記説明にある後藤斎宮氏は後藤慶大氏の曽祖父あたるそうだ。

 

二部屋をまたいで置かれ舟のつくりものと作品群。

ビーズの像は齊藤寛之氏、金のクローバーは小林正樹氏の作品。

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別の角度から。

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銀製のぐい飲みは1枚の円板から打ち出して作られている。

お盆は一部に金箔を貼った上から朱漆を塗って鹿角の粉で磨くことで、裏から明かりが来ているような不思議な雰囲気に仕上がってる。

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先代(先々代?)後藤久慶氏による火鉢。陶製の火鉢は重いので、軽い木製はつかいやすいのだろうと思う。手前の大型の杯も作品。

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右は仏の衣文の飾り盆。左の文字は先代が書いたそう。

「鎌倉流佛師 鎌倉彫初祖 運慶法印 廿八世孫久慶 」とある。

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 暗くて写らなかったが厨子の中には小さな聖徳太子像があった。

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齊藤寛之氏の作品。

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福成三太氏による「超人とんとん土俵」は、銅と別の素材とを象嵌してつくられている。

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こちらの吉田樹人氏の作品は写真に撮りそびれてしまった。鎌倉彫の彫跡部分をかたどりして立体化されている。「虚」の部分が「実」となって反転していて面白い。

今宵は満月! - Art Unit "eventum" Official Website

 

 

 軽い木(しかし漆塗りなので丈夫)の鎌倉彫ならではの展示方法。

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奥の部屋にも作品が。

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鎌倉彫の文机。

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こちらは火鉢としてつくられたものが、ワインクーラー(あったのは冷茶でしたが)に生まれ変わっていた。

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小さなスペースではありましたが、伝統とイマとが共鳴し合い、かつて越後妻有や市原のアート・トリエンナーレ会場で味わったようなワクワクした雰囲気を楽しませて頂きました。同様の企画があればまた伺いたいと思います。

後藤久慶ギャラリーは建物としても心地よいので、鎌倉を訪れる際にはおすすめです。