墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「他人の時間 TIME OF OTHERS」展 @東京都現代美術館

6/21の日曜日、小雨模様の午後、夫婦で木場へ出かけた。

下記の看板の下半分の展示。副題は「わたし」と「他人」ー近くに感じる時間。

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以下は美術館サイト及びパンフレットにある開催概要。

遠く離れた場所や時代の人々。自分とはつながりを持たない人。
タイトルにある「他人の時間」という言葉は、情報や人が早く移動するようになった現代だからこそ見えてくる隔たりを思い起こさせるかも知れません。国境を越えた同時代的な記憶や感覚が珍しくはなくなった一方で、経済的不均衡や価値観の違いによる衝突が増加する現代のグローバル社会。その中で生きる私たちが、どのように「他人」と接続し、あるいは何によって隔たれているかを考えてみることは、それぞれが生きる社会や歴史、そして自らが描く世界を問い直すことにもつながります。
本展は、4名のキュレーター(東京都現代美術館、国立国際美術館、シンガポール美術館、クイーンズランド州立美術館|現代美術館)の共同企画として、アジア・オセアニア地域のアーティスト18名の仕事を通し、他人の時間に向き合う手掛かりとなる作品をご紹介します。

 

入場したのが15時、ちょうど美術館ガイドスタッフによるギャラリートークが始まるときだったので参加した。約1時間のツアーだったが、わかりやすい丁寧な説明で時間は短く感じられた。解説なしでは見過ごしたであろうポイントや作家についての話を聞いたことで、各作品に深く関われたような気がする。

 

絵画、オブジェ、写真、音、音楽、映像など、「メディア」は様々。

遠く離れた距離や過去に遡る時間での出来事が、「他人事」から「自分事」に近づいてきた(ような気がした)

 

各作家についての解説は公式サイトにもある。

 

実は同時開催の山口小夜子展を主に見るつもりで来て、こちらの展覧会を見る時間を30分くらいと見積もっていたが、2時間じっくり見てしまった。

 

音や映像の展示をしっかり見ようとすると、鑑賞者用のヘッドフォンが6つしかない作品が2点あるので、館内が混雑していなくても待ち時間がかかる。

自分はその内の1点、ミヤギフトシ氏による「The Ocean View Resort 2013」に惹きこまれた。下記は、上記の公式サイトの「ミヤギフトシ」の項から

1981年沖縄県生まれ、東京都在住。高校卒業後に渡米。
ニューヨークでアート関連書籍の専門店に勤務しながら制作活動を始める。自らの記憶や体験と、それに関連する歴史に言及しながら、国籍や人種、アイデンティティといった主題について、写真、映像、オブジェ、テキストなどで丁寧に紡ぎ出す。
映像作品《オーシャン・ビュー・リゾート》は、作家本人を思わせるアメリカ帰りの主人公が、故郷の島に帰り、幼馴染のYと再会するところから物語が始まる。彼らが交わす会話の中では、知られざる島の歴史や、Yの祖父とある米兵の関係が語られる。それは主人公とYの関係性を示唆するようでもある。フィクションを交えながら、日本とアメリカ、そして沖縄の歴史的・政治的な関係の複雑さや、そこで揺らぎつづける個について考察する作品。

主人公と友人Yとの会話とYの祖父と米兵との会話が、人のいない沖縄のビーチのさざ波の音とベートーベン弦楽四重奏15番第三楽章の音とでつながって溶け合っていくような物語だった。

 

他にも、フィリピン生まれのキリ・ダレナによる「消されたスローガン」やベトナム生まれのアン・ミー・レーによる「アメリカ陸軍派遣部隊、ショールウォーター湾、オーストラリア『陸上の出来事』シリーズより」、カンボジア生まれのヴァンディー・ラッタナによる「独白」、シンガポール生まれのホー・ツーニェンによる「名のない人」などをはじめ一つひとつの作品が興味深かった。

 

ガイドスタッフの方の最後のコメントが印象に残った。

それぞれの作品はそれぞれの国で数十年前の過去に起こった辛苦の出来事についてのメッセージを発している。

本展の作家たちは、それを声高に何かを叫ぶような形ではなく、耳をすまし目を凝らしてやっとわかるようなひっそりとしたやり方で伝えている。

しかし、それは接した人の心に何かの印象を残し、それが世界に広がっていく力を持っているのではないか。(実際の言い回しとは異なります)

 

その解説も、そして各作品のメッセージにも共感できる展覧会だった。

 

解説いただいたご担当の方、誠にありがとうございました。

 

会期は今週末の6/28まで。10時~18時。一般1000円。

このあと、シンガポールやオーストラリアなどを巡回するそうだ。