墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「大軍都・東京を歩く」 黒田 涼著

何気なく手に取った本でしたが思わず引き込まれ、立ち読みでは済まなくなっていました。

以下が表紙裏の案内文。

”場”が語る歴史を歩いて味わう

近衛師団司令部だった東京国立近代美術館。高射機関砲の台座が残る千鳥が淵。第三連隊兵舎が不思議な形で残る国立新美術館。「坂の上の雲」の秋山好古の名が刻まれた碑が建つ池尻大橋。2・26事件の反乱将校らの処刑が行われた渋谷税務署。都内には、数多くの戦跡が残っている!

 

著者は大手新聞社で16年間記者を勤めて独立された方。

趣味の街歩きが高じて「江戸歩き案内人」になり、数多くの東京の歴史ガイドツアーを主催したり、「江戸城を歩く」「江戸の大名屋敷を歩く」などの本を出されています。

大軍都・東京を歩く (朝日新書)

大軍都・東京を歩く (朝日新書)

 

目次を見るとかつては23区内でも、かなりの場所が軍関係施設で占められていたことがわかります。

第1章 数々の歴史の舞台となった皇居 千代田・丸ノ内など

第2章 実戦部隊が集中する街 赤坂・青山・芝など

第3章 平和な公園に悲しみの歴史 外苑前・代々木など

第4章 武器製造の地だった文教地区 水道橋・護国寺など

第5章 尾張徳川家の跡地は軍人学校に 市ヶ谷・早稲田など

第6章 一大軍事工場として開発された城北 板橋・赤羽

第7章 陸軍と自衛隊、軍の今昔物語 十条・王子

第8章 閑静な住宅に残る跡 池尻大橋・駒場・三軒茶屋など

第9章 おまけのショートコース 築地・中野・本所深川など

各章ごとに、見やすくて必要な情報がまとめられた親切な地図(これがなかなかありません)があるので、この本を片手に街歩きができるようになっています。

 

はじめに、で著者は「今の日本の歴史教育は近現代が手薄」であり、「東京の街のイメージも時代劇などで見知った江戸の街から、明治・大正などはすっ飛ばしていきなり戦後になっているように思います」と書いておられます。

 

自分も、墳丘や神社を訪ねるとそこに戦没者慰霊碑が置かれていることが多いので、その時代の方々の気持ちがどのようなものだったか、気になってきているところでした。

 

今年は戦後70年になりますが、明治維新から太平洋戦争にかけてもほぼ同じくらいの78年間(1867~1945)あります。(開戦の1941年を基準にすると、今年2015年は74年後、明治維新は74年前になります)

明治維新からの70 余年は、戊辰、西南、日清、日露、第一次大戦、(関東大震災)、日中、太平洋、と戦時体制が常態化していた時代です。

今の日本があるのは、戦後の頑張りはもちろんですが、その前のしんどい時代を経ていることにもっと光をあててもよいのでは、と思います。

この本にあるように「今でも残っている跡」が消えかかっていることを知ると、なおさらです。

 

歴史には日向も日陰もあると思いますが「事実」がどれだけ大切か。

「場所」自体が持つ歴史的価値が、もっと尊重される社会になればと思いました。