墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「日本木造遺産 ~千年の建築を旅する~」 藤森照信・藤塚光政著

裏表紙にある下記の紹介文そのままの、読み応え・見応えのある素晴らしい本・写真集でした。

こんな木の建築が日本にあったとは!

建築史・藤森照信と写真家・藤塚光政の建築家の最強ユニットが旅した全国の奇想天外な、驚くべき日本の木造建築の数々。全国から選び抜かれた23の建築は、まさに日本が世界に誇る”日本建築遺産”だ。日本の木の知恵はすごい。

日本木造遺産 千年の建築を旅する

日本木造遺産 千年の建築を旅する

 

見慣れた著名建築物であっても天候や時刻を見計らった印象的なショットや、訪ねても見られそうにない視点(錦帯橋の裏側や瑠璃光寺五重塔の内部)、空撮(平等院や投入堂)などの貴重な写真が数多く掲載されていました。23編すべてに臨場感溢れる撮影記があります。

 

藤森先生の解説文は他の著書と同様、読みやすく奥深いと思います。個別の建物の構造的特徴だけでなく、その特徴についての日本建築史上の位置づけが解説されていてわかりやすく、しかも独自の仮説や想像も語られていて大変面白かったです。

 

解説でなるほどと思ったのは、例えば「書院造と数奇屋造の違いのポイントは”長押の有無”である」こと。

長押(なげし)とは鴨居の表に取り付けられる薄くて長い横板で、これが室内の鉢巻としてぐるりと回っているのが書院造。長押は仏教建築とともに取り入れられた水平耐力の強化材で、もともと竪穴住居の流れを汲む民家にはつかなかった。それが時代を経て格式を示す室内(=書院造)の飾りとなったが、数寄屋の方は先行する建築様式である茶室がその格式から離れたので長押がない、とのこと。

自分もここは人に説明できそうで嬉しいです。

 

この他にも、日本の宗教建築はなぜ建物の「長辺」が正面なのかや、天守閣は建築史の流れで前にも後にも繋がらないのはなぜなのかなど、興味深い話が随所にありました。

 

巻末には腰原幹雄・東大生産技術研究所教授による、各建物の「構造学の眼で見た木造遺産」という専門的な解説が付きます。

23ヶ所すべて行きたい場所ばかり(再訪も含めて)ですが、今まで知らなかった何箇所かは特に興味を惹かれました。 

福井県越前市の大瀧神社、秋田県男鹿市の赤神神社五社堂、大分県豊後高田市の富貴寺大堂、福井県坂井市の坪川家住宅です。どれも屋根が素晴らしい!

 

関東では3ヶ所、神奈川県横浜市(三渓園)の臨春閣、千葉県長生郡の笠森寺観音堂に加えて、神奈川県川崎市(日本民家園)にある「菅の船頭小屋」という建物がランクインしていました。

「わずか一坪に凝縮された日本建築史」と題されたその実物を見たくなり、早速1月最後の土曜日に周辺の古墳とともに探訪してきました。

次回につづく。