事務所から近い場所にある美術館。タクシー使えば5分ほど。
建物修繕のための3年の休館を経てリニューアルオープンしたことを知ったので、平日の昼休みに見学に行った。
正門に近い「目黒教育園前」の信号。公孫樹の葉がたくさん舞っていた。
11/22から12/25までの期間で、修復活動に関わる資料と、内藤礼の作品が展示されている(入館料700円)
1/17からは「幻想絶佳:アールデコと古典主義展」が開催される(入館料1200円)
入口の門にかかる大きなリース。
この門扉も新品のように修復されている。館内ビデオでは、足立区や鶴見区、高岡市の工場の職人の手で、欠けや錆びを直し塗装をする過程が紹介されていた。
門の横で入場料を払い、木立の中のアプローチを進む。
ところどころに紅葉が。
東京都教育委員会による説明板もあった。
上記説明板より。
東京都指定有形文化財(建造物)
旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)一棟
所在地 港区白金台5丁目21番9号
指 定 平成5年3月22日
朝香宮(あさかのみや)家の本邸として、昭和8年(1933)5月に竣工した建物である。一部内装の基本設計はフランスの装飾美術家アンリ・ラパンが担当し、実施設計は宮内省内匠寮(たくみりょう)工務課技師の権藤要吉らが分担して行った。
建物の規模は地上2階(一部、中3階)、地下1階。建築面積1,048.29平方メートル。主体構造は鉄筋コンクリート造である。
建物は昭和22年(1947)まで朝香宮の本邸として使われていたが、室内装飾には20世紀の初めの最も先進的で、最後の装飾芸術であったアール・デコ様式が随所に採用され、新鮮で華やかな意匠に満ちていた。
現在は美術館として使用されているが、内部の改造は僅少でアール・デコ様式を正確に留め、昭和初期の東京における文化受容の様相をうかがうことができる貴重な歴史的建造物である。なお、室内のガラス装飾は装飾工芸家ルネ・ラリックの作品として有名である。
平成6年3月31日建設 東京都教育委員会
今回新たに新館が建ち、展示スペースとして使われていた本館は、元の邸宅としての姿を復活させている。
塗り替えられたばかりの白い壁(リシン掻き落としという手の込んだ左官仕上げ)が美しい。
堂々とした車寄せ。客人を招く邸宅は、洋館でも和館でもまずは玄関が重要ということか。
同時期(昭和8年:1933年)に竣工した建物は、最近自分が見たものでは、同じ年の旧高輪消防署、翌年の明治生命館や東工大本館がある。旧高輪消防署の「ドイツ表現派」に対して朝香宮邸はフランスのアール・デコだが、雰囲気は似ているのでは。
屋上に屋根つきテラスがあるようだが、そこに行くことはできなかった。
庭園は整備工事が継続中で、入れるのは来年度以降になる。
3方をアーチに囲まれた車寄せ。天井の円形も呼応している。
玄関側から見た眺め。たくさんの車や馬車が並んでも大丈夫。
玄関と反対側、新館側から見た本邸。ここも最上部に気になるスペースがあったが、階段は2階から上へは進めなかった(HPの各部屋紹介でウインターガーデン:屋上階の温室、と説明があり室内写真もあった)
この洋館が建つ場所も、南東方向は目黒川へと下り始める台地の縁にあるように思う。かつては素晴らしい眺めがあったのでは。
「リシン掻き落とし仕上げ」の外壁。石を細かく砕いた粒を左官材料と混ぜたものをリシンといい、外壁を左官で平たく塗ったあとそれが乾かないうちに大きな剣山のような道具で掻き落としている様子を修復映像で見せていた。洋館とはいえ、ベースには日本の職人技があったことがよくわかった。
午後の光を吸収しつつ、「落ち着いた深み」を醸し出している西側面。
窓の上の通気口のデザインも、「アール・デコ」のアクセントになっている。
本邸と新館とをつなぐ渡り廊下。少し傾斜がある。
新館建物。大きなホワイトキューブの展示スペースがある。こちらにカフェとショップがある。
廊下の途中に美しいガラス壁(三保谷硝子製)があった。
上記のガラス壁を通過した光が石壁にあたったところ。皮のソファの表面のような感じになっていた。
新館の設計・監理は東京都財務局と久米設計。杉本博司氏が(展示室の?)アドバイザーになっている。
新館の外部テラスからは、本邸の庭も望めた。奥にあるのは安田侃氏の大理石の彫刻。
次回(内部編)につづく。