11/3、連休の最終日、昼から目黒の旧前田家本邸へ出かけた。
東京文化財ウィーク期間の特別企画でボランティアガイドによるクイズラリーが実施されていた(10/25~11/3)
旧前田家本邸は普段も月・火を除いて毎日公開しているが、上記期間中は「金唐紙(きんからかみ)」と「トランク」の特別展示があった。入場無料。
「旧前田家本邸(洋館)」一般公開日について:東京都教育委員会
下記は文化財ウィークのパンフより
「巨木と緑あふれる目黒区立駒場公園内に建つイギリス・チューダー様式の趣のある本館洋館と迎賓館として建てられた和館があります。戦前の大名華族の邸宅を代表する規模と意匠を誇るとともに、洋館・和館がそろって残されている数少ない例として大変貴重です」
駒場公園は東大駒場キャンパスに1街路をはさんで隣接する。
前田家は旧加賀藩主で、もとの屋敷は東大の本郷キャンパスにあった(重文の赤門は12代藩主前田斉泰が建立)が、関東大震災後に本郷を拡幅したい東大の要請に応えて農学部のあった駒場に移転し、昭和4年(1929)に第16代当主前田利為(としなり)の本邸が建てられた。
設計は、当時の東大教授・塚本靖と、宮内省の高橋貞太郎。
戦後は1957年まで連合国軍が接収し、1964年に東京都が所有、1967年から2002年までは東京都近代文学博物館となっていた。
1991年に東京都有形文化財指定。昨年2013年に国の重要文化財指定を受けたばかり。
家族で昼から車で行った。公園に駐車場はないので近くのコインパーキングに停めた。周囲は高級住宅街。日本民藝館もそばにある。
公園入口から馬車が通りそうな雰囲気のアプローチを進むと車寄せになる。
履物はビニール袋に入れてスリッパで見学する。
入ってすぐ右手に喫茶コーナー。華族の気分をリーゾナブルな価格で味わえる?
建築様式は「チューダー様式」
イギリス後期のゴシック様式を簡略化したもので、玄関ポーチ(下の写真)などの扁平アーチや、天井に並行する太い木の梁にその特徴が現れている。
イタリア産大理石によるゴージャスな角柱、柱頭はコリント式。
1階ホールのシャンデリア。ここと1階から見上げることができる部分の2階シャンデリアは共通だが、その他は各部屋で意匠が異なる。
大階段の下には、ちょっと休めるスペースがある。
階段下の小部屋。つくりつけのソファがある。
左にあるのが特別展示の金唐紙。当初は1ホール、客間がこの金が施された壁紙だった。
1階中央の客間。かつては16人掛けのテーブルがあった。庭がよく見渡せる。
上記の廊下側の壁には巨大なマントルピースが。ただしこれは「飾り」であり、暖房は、地下施設で暖めた空気を建物全体に循環させるセントラル・ヒーティング・システムであった。
上記のマントルピースの上部左右、ランプの背後だけ当初の壁紙つまり金唐紙が残っている。
中央客間の次の間。左の戸棚は地階からディナーを運ぶエレベーター。近代的な設備で驚いた。ちなみにこのあたりにいると右の鏡を通して後ろの客間の様子が見えるようになっている。
上記の部屋からは和館への連絡通路が続く(和館は現在閉鎖中)
一行は階段を上がって2階へ。2階はプライベートな部屋になる。
長女の部屋。
広々とした書斎。この部屋だけ天井が木製になっている。
書斎に展示されていた、実際に使われていたトランク。「MAYEDA」のつづりの方が「マエダ」の発音に近くなるそうだ。
広々とした、夫妻の寝室。
6人家族に対し「サポートする人」が160人いたという。この和室では、寝泊りしたわけではなく、多くの人は通いだったようだ。
中庭側の大階段の窓。
中庭の煙突。全館集中式の暖房施設から伸びている。
40分ほどのツアーだった。クイズに答えてきれいな絵葉書をいただいた。
外に出て庭に回る。
日が出てきて、外壁のスクラッチタイル(当時の流行)が綺麗な色を出していた。
(前田邸竣工から6年遡る1923年に、フランク・ロイド・ライトが、外壁にスクラッチタイルを多用した帝国ホテルを竣工させている。その、9月1日の落成記念披露宴準備中に関東大震災が起こったが、建物はほぼ無傷だった)
正面の庭は広い芝生で気持ちよい。周囲は桜なので、春にまた来てみたい。
建物の方は、木が育ちすぎて隠れてしまっていた。
かなり寄らないと建物がよく見えない。一階バルコニーは、チューダー型アーチがリズミカルに3連。
2階のベランダの東西の角にはガーゴイルが守備を固めていた。