サブタイトルは「美と空間の系譜」
著者は名古屋の大同大学副学長、西洋建築史専門。
西洋建築をギリシア建築(古典系)とキリスト教建築(中世系)の2つの流れで明快に説明されており、とてもわかりやすい建築解説書でした。
ギリシア系の建築原理は柱が梁を「支える」ことにあり「柱」から普遍性のある「美」が導き出されたが、中世キリスト教系の建築原理は壁が空間を「囲う」ことにあって「壁」の論理を進めてゴシック建築のようなキリスト教独自の「空間」を創造した、というストーリーが豊富な事例で紹介されています。
著者はフランス中部ヌヴェールという町のサンテチェンヌ聖堂に魅せられて建築史の道に入ってゴシック建築の内部空間(身廊壁面の線条化プロセス)の研究を進め、この本を書くまでに調査した教会は200超、実測した支柱は800本超になるそうです。
僭越ながら、量をこなすと理解が深まり説得力も増す、という学びの形の典型のように思いました。
横道の話ですが、よく使う「オリエン(オリエンテーション)」という言葉は、定位(位置を定める)という意味で、教会堂の建立にあたって、その方位(入口から内陣に向かう中心軸)を東に定めたことに由来する(本書99頁)ことを初めて知りました。