墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「沖縄シュガーローフの戦い」(続きの後編)

前回のつづき。

 

著者による「はじめに」の部分です。

本書の調査をするにあたって、多くの海兵隊員と親しくなった。背の高い者も低い者も、物静かな人物とも、にぎやかな人物とも、負傷したものとも、そうでない者とも。彼らの職業もさまざまだった。億万長者、元セールスマン、海兵隊の二人の将軍、医者、農夫、トラック運転手、教師、薬剤師、州の最高判事、二人の大臣、航空技術者、それに前科者まで。

彼らの職業はさまざまだが、一つの共通点があった。それは彼らがいまでも海兵隊に従軍したことを誇りに思っていることである。シュガーローフの戦いから50年を過ぎた今日でも、彼らは戦友たちの死を語るときには涙を浮かべ、インタビューの終わりには嗚咽することもあった。彼は最後に「とにかく、ありのままを書き残してほしい。・・・どんな些細なことでもね。・・・そうしたら皆は理解してくれるはずだ。」

私は自分なりのやり方で、シュガーローフ上で戦った不屈の海兵隊員たちに報いたいと考えてきた。本書は彼ら海兵隊員たちの物語である。

 

そして下記は訳者による「あとがき」の部分です。

他の太平洋戦線の島嶼戦闘と同様に、この戦いに従軍した日本側の証言、記録とも現存しているものはきわめて少ない。これは前線の日本軍将兵の大半が、戦闘中、あるいは撤退戦の中で、戦闘記録を残すことなく戦死してしまったためと思われる。日本兵の戦死体のほとんどは米兵らがその場で埋葬するか、捨て置かれてしまい、記録が残っていない。これにより戦没者の多くは、部隊の戦闘経緯や最期の状況が全くわからない場合も多い。そのため、本書に敵兵として登場する名もなき日本兵らの姿は貴重な目撃証言である。

・・・(中略)・・・

これら日本兵の最期は、彼ら海兵隊員らの証言がなければ、語り継がれることもなく、永遠に忘れ去られてしまったのではないだろうか。

 

抜書きばかりで恐縮ですが、戦闘場面も載せさせていただきたいと思います。本にはこのような場面がページをめくるたびに出てきます。

 

凄惨な場面が苦手な方は下記は飛ばしていただいた方がよいかと思います。

 

 

 

【閲読注意】

第2章 海兵隊、南へ 47頁より

夜明けと同時に、海兵隊は小さな丘や段地が連続する南方向に向かって攻撃を開始した。これに対する日本軍の反撃は凄まじく、小火器の銃弾や迫撃砲弾が海兵隊員たちに降りそそぎ、ピューも低い石垣のかげに隠れた。兵士たちは、その場所から一人ずつ飛び出して平野部を横切り、その先にある用水路に飛び込まなければならなかった。ピューが飛び出す番になったとき、海兵隊員が用水路に伏せているのが見えた。

彼に目をやった瞬間、迫撃砲弾の破片が散って、伏せている兵士の腰の上の部分が、まるで斧で叩かれたように、ざっくりと切り裂かれてしまった。明け方のひんやりとした空気の中、ぞっとするような傷口からは湯気が上がっていた。この光景はピューが以前、故郷で見た豚や鹿の食肉解体シーンを思い起こさせていた。用水路に飛び込んだピューは、この死んだ海兵隊員が十代の補充兵であるのに気がついた。前夜、彼は死の恐怖から目に涙を浮かべていたが、その恐怖が現実のものとなってしまったのだった。

 

第7章 最前線 194頁

シュガーローフと、後方の陣地の間の平野部は、破壊された装甲車両にキャタピラのはずれた戦車、焼けた木々に、ありとあらゆる残骸で、廃車置場のような様相を呈していた。

「紙くずに、紙の箱に、砲弾ケースみたいな普通のゴミもね」さらに数多くの死体もあちこちにあった。そのうちいくつかは彼がいた土手の裏側まで運ばれてポンチョで包まれていたが、多くは野ざらしで、数日後に死体処理班がきて運び出していった。それ以外にも、死者としての尊厳さえ失う者もいた。彼らは文字通り小さな破片となって散らばっていた。リアの陣地の周辺は、腕や、脚、それに部位の判別ができない肉片があたり一面散らばっていた。いくつかの肉片には緑色の戦闘服の一部が巻き付いており、かろうじて海兵隊員のものだと判別できた。

 

同章 199頁

日本軍の砲撃は、海兵隊員たちに無差別におとずれる死の恐怖をあたえていたが、狙撃兵は冷徹に選択された死の恐怖を味わわせていた。・・・

「もし、将校で45口径の拳銃ストラップを肩からかけていたら、瞬時に射殺された」とビル・ピアース一等兵は語った。「やつらは必ず眉間か、胸のど真ん中を狙ってくる。一発で即死だよ。おまけに絶対はずさない。この部分を撃たれた死体があまりにも多いから誰もがショックをうけたよ」狙撃兵による戦死傷者の中でももっとも多かった階級は中尉だ。「中尉はつぎからつぎにやってきて、まるでトイレットペーパーみたいだった」とロナルド・マンソン一等兵は回想した。「もう名前を覚えていない中隊長もいたよ。ある将校は着任してから15分で死んで、またつぎのがやってきた」

 

第10章 シュガーローフ陥る 266頁より

殺戮がつづいたシュガーローフでは、まるで肥溜めのような状態になっていた。D中隊のアーブ・ゲハート一等兵は、腐敗した肉塊の堆積物の横を通過していた。2日前まで、このうち何人かは友達だったはずだが、いまは黒く膨張して誰だかわからなくなっていた。

「シュガーローフには11回も突撃した」とゲハートは語った。「毎回、丘に突撃する前に集中砲火をくわえて、突撃して、そのジャップの野郎がもどってきて俺たちを攻撃する。その場所に野ざらしの状態で、たくさんの死体は転がっていた。誰も死体を収容できなかったんだ、ジャップのやつらは自分たちの戦友の死体を持ち帰ろうとしていたみたいだけどね。肉片や体の一部分は、そこら中に散らばっていた。5月18日に俺たちが突撃したとき、死体を踏まずに丘をのぼるのは不可能だった。我々のもジャップのもね。そこには沢山の男たちがいたけど、しかし様子はよくなかったよ。まさに臭い生ゴミの山をのぼるような感じだったからね」

 

自分は、たまたまこの本を手に取り、ひとつの現実を知る機会をいただきました。

ご興味を持たれた方は、ぜひ、本書を手にとってに読んでいだければと思います。