6月12日から始まった、ボルタンスキー(1944年~ フランス生まれ) の展覧会を見に行きました。日本における過去最大級の回顧展とのこと。
ボルタンスキーを初めて知ったのは20年近く前になる越後妻有トリエンナーレ。廃校の体育館の展示は扇風機に揺れる電灯や藁に匂い、そして棺桶にちょっと驚かされました。
その後、瀬戸内の豊島の海辺の小屋で見た(聞いた)心臓音コレクションでも、死と生を直に感じ取らせるような感覚が残りました。
3年前の東京都庭園美術館の展示は「アニミタス~さざめく亡霊たち」
ヴェールに印刷された顔が揺らめく姿、チリの砂漠のどこかで人知れず鳴り続ける風鈴に心地よさを感じました。同展示のインタビュービデオでは「魂は死後しばらくの間、あたりを浮遊しているのでしょう」との作家の言葉が印象的でした。
本展も死を想起する作品が多いですが、死んでもどこかにつながっていく感覚、再生や輪廻へのイメージまでは行かなくとも、個は孤ではないというメッセージがあるように感じました。あくまで個人の感想ですが。
会場は、古い写真を並べた部屋、”モニュメント”を並べた教会堂のような部屋、「ぼた山」を中心とした大空間とその続き、と大まかに3つに分かれています。
各作品には何の表示もなく、入口で配られるタブロイド8頁の新聞が、“理解”へのヒントになりますが、最初は解説に目をくれずに進むのも面白いのではと思います。
(そうするためには以下はネタバレになりますので、観覧後に再訪いただければ幸いです)
↓
↓
↓
↓
↓
会場の奥半分ほどは撮影可となっていました。
心臓音の響きとともに電球が明滅する暗い部屋を抜けると「 幽霊の廊下」(2019年)があり、正面の「ぼた山」へと導かれます。
「ぼた山」(2015年)は黒い服が山と積まれた作品。
公式サイトによれば、この作品はベルギーの炭坑複合施設で展示するために制作されたそうで、「大量の黒い衣服が積み重なってできた山は、炭鉱で働いた多くの人々の存在を象徴すると同時に、その個性と思い出がはかなく消えてしまうことをも暗示しています」と解説されています。
自分的には、服で出来た円墳!
最大天井高から吊り下がる100枚以上のヴェールは「スピリット」(2013年)
「ぼた山」の大部屋には2か所、大型の映像展示があり、風鈴の音とクジラの声(?)が流れていました。
アニミタス(白)2017年は、カナダ北部に設置された作品(のビデオ)
東京都庭園美術館で見たチリの砂漠「アニミタス(チリ)」の別バージョン。
ミステリオス(2017年)はパタゴニアの海岸に設置された、クジラと会話しようとする装置。動画の長さは12時間!
その後ろには「白いモニュメント、来世」(2019年)
この先に「保存室」や「黄金の海」があり、出口になりますが、途中でかすかに藁の匂いを感じました。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2019/boltanski2019/
おすすめの展覧会だと思います。
一般1600円。2019年9月2日まで。