墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

三岸家住宅アトリエ(アトリエM) 東京都中野区上鷺宮

今回も東京文化財ウィークで拝見した建物の紹介を。

11月4日に特別公開があり、10時と13時の各回30名の枠だったが、事前申し込みで枠内に入ることができた。協力金1000円。

 

西武新宿線鷺ノ宮駅から北へ徒歩9分。 住宅街を歩いていると階段があった。

 

目的地は新青梅街道を越え枝道を入ってすぐ。

 

画家の三岸好太郎(1903~1934)・節子(1905~1999)夫妻のアトリエとして、昭和9年(1934)に建てられた。現在の玄関は後の増築。

 

設計はバウハウスに学んだ山脇巌で、施主の感性と設計者の理念が具現化したモダニズム建築。

今は前面の木々が大きく育って全貌を見えにくくしているが、 竣工当初はまさにバウハウス風(下記は当日いただいたフォト小冊子より)

 

大きなガラス窓が嵌められた開口部は南東を向く。

アトリエなのに南に大窓があるのは、かつて南側にあった茅葺農家の建物の眺めを三岸好太郎が気に入ったからと伺った。

 

手前の張り出し部が当初の玄関。

右奥の門からガラス窓の前を通って、塀の内側に回り込んで入る

 

敷地に入って。正面が当初の玄関。

 

当初のドアも赤、大窓の木製の窓枠は青、外壁は白と、現代に照らしても非常にモダンな外観だった。

 

吹き抜けのアトリエに入って振り返ったところ。

 

上記の右の白壁には絵画や家具が並ぶ。

 

さらに右を向くと、上にドアが。かつてはドアの左に梯子が付いていて、倉庫として使われていたそうだ。 

 

さらに右側には引き戸があり、トイレや風呂、2階階段へと続く。

 

引き戸の上部には天井まで伸びる北側窓。かつては建物内外を区切っていた開口部で、手前側天井までガラス窓が伸びていた。

 

さらにぐるっと右を向くと螺旋階段。

吹き抜け天井まである窓は今でこそ普通だが、昭和9年では驚きだっただろう。

 

画家が当初からこだわった螺旋階段。

 

上がらせて頂くこともできた。 

 

そこから見たアトリエ空間の上部。構造は木骨だが、バウハウスの流れを組む木造建築は世界的に見ても希少なので、海外からもよく見学に来られるのだそう。

 

以下は東京文化財ウィーク・カードの説明文

画家・三岸好太郎・節子夫妻のアトリエとして、昭和9年(1934)に建築されました。好太郎(1903~34)は北海道に生まれ独学で洋画を学び、彗星のように画壇に現れ、31歳の若さで夭逝しました。節子(1905~1999)は女子美術学校を首席で卒業し、95歳で亡くなるまで絵を描き続けました。

昭和初期、南側に藁葺き民家のある景色を気に入った好太郎がここに最初のアトリエと、ついで、好太郎の知人の山脇巌の設計でアトリエを構えます。山脇巌は、妻の道子とともにドイツのバウハウスで学んだ建築家です。好太郎は螺旋階段や3面のガラス窓等を望み、山脇も模型やスケッチを使って共同で設計を進めますが、好太郎は竣工を待たずに亡くなりました。アトリエは節子が完成させたものです。

外観は、直方体を組み合わせた平明なデザインです。螺旋階段がアクセントとなるアトリエ内部は二層吹抜けで、天井まで大きく切り取った窓を南東面に配します。施主の感性と設計者の理念が具現化されたモダニズム建築です。

 

強い思い入れで建てたアトリエだったが、三岸好太郎は竣工前に31歳で夭折している。 とても残念だっただろうが、設計者とともにあれこれ考える時間は幸福だったのではと思われた。

北海道立三岸好太郎美術館のサイトで作品や年譜が見られる。

http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/mkb/gagyou.htm

 

三岸節子は1968年に南仏に渡ってヨーロッパ拠点に絵を描き続け、1989年に84歳で帰国した後は神奈川県大磯町の自宅兼アトリエにて制作を続け、1999年に亡くなっている。

愛知県一宮市立の三岸節子記念館のサイトで年譜や作品を知ることができる。

http://s-migishi.com/information.html

 

螺旋階段を上がった部屋は和室に改造されている。 

 

当初の建物の角の部分。

 

増築された玄関棟の屋根。 

 

そこから北側の2階部分に回り込んだ。アトリエ北壁の外側で、手前には階段、左には”空中ドア”への通路がある。

 

”空中ドア”のあるかつての倉庫部分。

 

倉庫部分に入って振り返った右側。アトリエ北窓の外側になる。

 

”空中ドア”から見たアトリエ。

 

30人くらいの見学者で、写真を撮るタイミングがなかなか難しかった。

 

先ほどの螺旋階段を上がった2階和室の、階下の部屋。 タイル貼りの暖炉もある。

 

 

そこから見た窓の外には中庭があった。

 

その窓を中庭側から見て。

 

北側から見た現在の建物。

 

こちらの建物、今はアトリエMというレンタルスペースになっていて個展が開催されることもあるので文化財ウィーク以外での見学の機会も。カフェになる日もあるそうなのでツイッターで確認して行かれるとよいかと思います。

最近では映画「終わった人」のロケもあったそうです。

https://twitter.com/studioatelierm