墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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ジャコメッティ展 @国立新美術館(開館10周年記念展)

先月になってしまったが、国立新美術館で開催中のジャコメッティ展へ、始まった直後に行った。 

 

アルベルト・ジャコメッティ(1901~1966)はスイス(のイタリア語圏)に生まれ、フランスで活躍した彫刻家。若い時期は同時代のキュビスムやシュルレアリスムの影響を受けつつも30代半ばからは人体を縦に細長く引き伸ばしたような独自のスタイルを採るようになる。

132点の展示品には彫刻だけでなく油彩や版画もあり、独特な素描も素晴らしかった。

ジャコメッティは素描の際、モデルに長時間同じ姿勢をとらせたとあったが、作品を見ていると対象を強く見つめ過ぎて視線の先しか見えなくなるような気分を味わえた。

 

細長い人物像は、当初は作るたびにサイズが小さくなっている。モデルとの距離も含めて目にに見えているとおり忠実に表そうとすると数センチになってしまうとのことだった。高さ数センチの作品も展示されている。

 

公式サイトにあるが、素描でも彫刻でも、本質に迫ろうとする葛藤が作品に直に表れているところが多くの人をひきつける魅力になっているように思えた。

http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/giacometti2017/

 

終盤では撮影可の展示室もあった。

 

 

チェース・マンハッタン銀行からの依頼を受けて晩年に挑んだ大型作品が3点揃って展示されている。いずれも1960年の作。

「大きな男」はジャコメッティの弟のディエゴがモデル。

 

「女性立像Ⅱ」と「歩く男Ⅰ」

ニューヨークの広場のために制作されたものだが、そのプロジェクト自体は実現しなかったそう。

 

本展で最も背の高い作品で276cmある。

この一つ前の部屋では「ヴェネツィアの女」シリーズが展示されている。そちらの女性立像は120cmほどだが、9体が並ぶ姿は荘厳で菩薩群像のようだった。

 

「歩く人Ⅰ」は高さ183cm。数少ない、動きのあるポーズ。

 

 背面から。

 

彫刻には、木彫や石像のように削っていく引き算のものと、塑像やブロンズのように芯に粘土などを加えていく足し算のものとがある。

ジャコメッティの彫刻は、前者の削ぎ落としていって本質に迫るという作品でありながら、製作過程は後者の肉付け方式で、しかもその跡を生々しく残しているというところが非常に興味深く思われた。

 

犬や猫をモデルにしたキュートな作品もある。

9月4日まで、火曜日休館。一般1600円。