墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 @東京都美術館(& 東京藝大)

ピーテル・ブリューゲル(1世)が描いた2枚のバベルの塔のうち、後の方の1568年に描かれた作品が展示の目玉。 

幅75cm×天地60cmの小さな画面に、雲の上まで聳える塔が圧倒的なスケールで描かれている。

 

会場は撮影不可だが、最後の通路に記念撮影用拡大パネルがあった。

ブリューゲルのバベルの塔は、現実の縮尺に当てはめると高さ510mになるそうで東京タワーは凌駕するとのこと。

 

塔と言っても、円錐のピラミッドの煉瓦の塊。高さが500m超とすると直径は300mほどか。そう仮定すると立地面積は東京ドーム内の倍近くになる(7ha位?)

 

展示室では作品との距離があるので肉眼での確認は困難だが、塔を建設していたり周辺で暮している人々が1400人も描かれているそう。

建設機械などもしっかり描き込まれていて、この時代の建築技術・建設工法もこの絵からわかるとのこと。

絵の前に立ってじっくり観察することは難しい状況だが、会場内には藝大生作成による壁一杯に拡大された精密模写があってじっくり観察できる。(動きを入れた映像も別室で見られる)

 

 

展覧会の副題は「16世紀ネーデルラントの至宝 ~ボスを超えて~」で、ヒエロニムス・ボスが描いた「放浪人(行商人)」と「聖クリストフォロス」も見られる。どちらも1500年頃の作品。

世界中で約25点しかないとされるボスの真作2点の初来日となる。こちらも背景の細部に引き込まれてしまった。

 

ヒエロニムス・ボス(1450頃~1516)といえば「快楽の園」(マドリード・プラド美術館)が有名だが、現在のオランダ南部スヘルトーヘンボスで生まれそこで生涯を過ごし、名前も地名にちなんでいる。

ブリューゲル(1526/30頃~1569)は、ウィーン美術史美術館のコレクションが著名だが主に活躍した場所はベルギー・アントワープ。銅版画の下絵画家だったブリューゲルはボス風の作品が人気に乗って「第2のボス」と呼ばれていたそうだ。会場には数多くの銅版画も展示されている。

digital.asahi.com

 

本展ではヨアヒム・パティニールの「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」と「牧草を食べるロバのいる風景」も見られる。

こちらの2点も小さな画面の中に風景や人物が細かく書き込まれているが、別の世界を窓から覗き込んでいるように感じた(どちらも横幅30cm以下)

一昨年読んだこちらの本でもカラー口絵で紹介されていて、見たいと思っていた作品だった。

「青のパティニール 最初の風景画家」 石川美子著 - 墳丘からの眺め

 

絵の中に入り込んでいけるような細密風景画が好きな方には必見の展覧会では。

バベルの塔をはじめとして、おしなべて展示作品のサイズが小さいので、閉館間際などの比較的人の少なそうな時間帯に作品を絞って見ることをおすすめします。

 

会場入口脇(ロビー)には、大友克洋による「INSIDE BABEL」の展示も。

 

バベルの塔の断面が想像されて描かれている。

 

確かに、塔の芯にあたる部分は明かりを取り入れるために空洞とするのが理にかなっている。

 

東京藝大キャンパスでの立体展示「Study of BABEL」展へも行ってみた。

雪村展とは道を隔てた側のキャンパス内では、ブリューゲルのバベルの精巧な立体模型が展示されている(入場無料)

 

赤レンガ1号館(明治13年:1880年竣工)を横目に見ながら。

 

案内板に指示に従ってすすむ。

 

会場の建物が見えてきた。

 

 こちらには高さ3mほどの半身の立体模型があった。

 

非常に精巧に造られていて驚いた。映像だけの3Dとは違う大迫力。

 

煉瓦を引き上げるクレーン。元の絵のとおり、付近は煉瓦色。

 

漆喰を引き上げるクレーンの周囲は白。動きはしないが立体化されていてわかりやすい。

 

聖堂のあたり。会場では、設置されたipadで顔写真を撮ると、聖堂内で動く人物像に顔が反映されるという細工がされていた。

 

隣の部屋(半身の塔の裏側)ではプロジェクションマッピングでの展示もあった。

 

隣り合う部屋では法隆寺の釈迦三尊像の復元展示があった。復元壁画とともに。

 

現地では体験できない視点から拝観できる。素晴らしい。

ぜひこの機会に。

期間は東京都美と同じ7/2まで。入場無料、月曜休館で通常17:30までだが金曜は20時まで。