8月21日の日曜の午後、興味をそそられる講演会がありましたので参加しました。
考古学講座「成田市船塚古墳の調査について」
講師:総合研究大学院大学・博士後期過程 今城未知氏
成田市船塚古墳は、公津原古墳群で最も大きな古墳です。現在は、成田ニュータウンの赤坂公園の中にあります。
墳丘の周りに掘られた周溝が長方形であることが、以前から注目されていますが、前方後円墳なのか、前方後方墳なのか、あるいはきわめて希な長方形墳なのか、長い間謎でした。
今回は、昨年の 12 月に行ったレーダー探査と3次元レーザー測量の調査の成果について、お話いただきます。
船塚古墳は2年前に2回続けて訪ねた古墳。全長85mもある「前方後方墳」とのことでしたが、くびれ部が明確でなく「大きな布団が敷いてある感じ」がしていました。
千葉県の古墳私的10選のひとつでもあります。
講座案内にあるとおり「墳丘の周りに掘られた周溝が長方形であることが、以前から注目されていますが、前方後円墳なのか、前方後方墳なのか、あるいはきわめて希な長方形墳なのか、長い間謎」とのことであり、「昨年の 12 月に行ったレーダー探査と3次元レーザー測量の調査の成果」が伺えるとのことで期待して出かけましたが、結論から言うと「長方形墳」の可能性が高いことが確認できたとのことで、期待した通りの価値あるお話を伺うことができました!
講座の内容は以下のテーマに沿って90分ほどでした。
1、船塚古墳周辺の地理環境と古墳
2、船塚古墳の概要
3、三次元デジタル測量の方法
4、GPR(レーダー)探査の方法
5、デジタル技術を用いた千葉県内の古墳調査
6、船塚古墳の調査
7、まとめと今後の展望
船塚古墳が含まれる公津原古墳群は4世紀前半から7世紀まで古墳が連綿と築かれますが最盛期は6~7世紀、船塚古墳もその6世紀中頃の築造で全長は86m、三段築成で大刀、人骨、円筒・形象埴輪が出土しており、埴輪は近くの公津原埴輪窯で作られているそうです。
3次元デジタル測量ではレーザースキャナで1日で測る方法もあるようですが、十万を越える点に割り箸を立てて等高線を記入するという作業が、そしてGPR探査ではアンテナの入ったボックスを斜面にころがしていく作業が、発掘作業とは違う地道な大変さを醸し出していましたが、講師の方の言葉にもあった「墳丘を破壊することなく研究を進められる」ことは素晴らしいと思いました。
3次元計測については以前、岡山大の新納教授の講義で、計測の精度が高まることによって新たに導き出せる仮説を伺い、”目の前が開いたような刺激”を受けました。
千葉県内での調査事例は、芝山町高田2号墳、横芝光町殿塚 姫塚古墳、芝山町山田・宝馬3号墳、龍角寺50号墳、山武市山室姫塚古墳、山武市朝日ノ岡古墳など。
前に訪れたことがある古墳では「あそこに石室があったんだ!」などと思いながら聴講させていただきました。
船塚古墳は昨年12月の調査で報告書は作成中とのことでしたが、墳丘の下2段が長方形であることがGPRの探査図で示され、複数の事例を聴いた後だったので説得力を持って受け止めることができました。
大変有意義な講座でした。講師の今城様、風土記の丘資料館の関係者のみなさまに感謝申し上げます。
なんと今回の講座の会場には一般の方に混ざって大塚初重先生が聴講されていました。
先生は昭和35年(1960)に船塚古墳を調査され、その際に「前方後方墳」との見解を示されていました。
講座終了前に大塚先生から、発表された内容について感動を覚えたということ、60年間で発展した技術に対しての感慨と、新しい事実はあくまで事実であって長方形墳というジャンルの位置づけが今後のテーマになる、というとても前向きなコメントがありました。
先生のお話は2年前に下記の講演でお聞きしましたが、今回も90歳という年齢を全く感じさせない元気な御姿でした。
シンポジウム「古墳研究のさきがけ・ガウランドを考える ~これまでの研究成果と大英博物館所蔵資料に関する新知見~」 基調講演 大塚初重先生
長方形墳は非常に珍しい形ですが、南に7km弱の酒々井総合公園内に長辺30mの墨小盛田古墳(すみこもったこふん)は探訪しました。
それにしても、千数百年も風雨にさらされてきた”土盛り”が今も残って、メッセージを伝えてくれているという”奇跡”には、あらためて感動を覚えました。