5月14日の土曜日、 4月末に旧日本煉瓦製造ホフマン輪窯で見たポスターに惹かれ、5月10日に修復を終えて公開が始まった栃木県野木町の煉瓦窯(重要文化財)を見に行った。
明治23年(1890)に完成した、美しい煉瓦積みのホフマン式輪窯。5月15日までは「グランド オープン ウィーク」期間中だった。
東北自動車道の加須ICから車で30分ほどの場所にある。家を早めに出て9時半ごろに着いたがすでに見学ツアーは始まっていた。
10~20名のグループに分かれてガイドの方の説明を聞く。
テント脇にあった解説板。
野木町(旧下野煉火製造会社)煉瓦窯
・下野煉化製造会社の概要
下野煉化製造会社は、明治21年(1888)10月に設立、明治・大正・昭和期と赤煉瓦を中心に製造を続けました。
前身となる東輝煉化石製造所が明治21年(1888)1月に先行して近くの旧谷中村(現在の渡良瀬遊水地)に設立され、そこで製造された煉瓦は、この煉瓦窯の築造の際にも利用されました。
この場所は煉瓦の原料となる粘土と川砂に恵まれ、渡良瀬川の水運も利用できる煉瓦製造に絶好の地として選ばれました。
かつて構内には、ホフマン式輪窯のほか、素地製造場、登窯、事務所などがありました。
操業開始後、会社名は下野煉化株式会社、下野煉瓦株式会社、下野煉瓦工業株式会社、株式会社シモレンへと改称され、煉瓦製造は昭和46年(1971)まで続けられました。
・煉瓦窯の概要
この煉瓦窯は、日本に現存する有数のホフマン式輪窯のうち、最古かつ唯一の完全な形のものです。
下野煉化製造株式会社構内の東西に2基あったホフマン式輪窯のうち、東窯と称されたものであり、煉瓦の焼成窯として明治23年(1890)に築造、投火されました。
この煉瓦窯の各所より、東輝煉化石製造所で製造されたと思われる「T」字の刻印がなされた煉瓦が見つかっています。
ホフマン式輪窯は、ドイツ人ホフマンが安政5年(1858)に特許を取得した赤煉瓦焼成用の窯であり、環状の窯の中で火を循環させながら窯詰め、予熱、焼成、冷却、窯出しの焼成工程を繰り返し、一度点火することにより半永久的に焼成可能なものです。
この煉瓦窯は、昭和54年(1979)に重要文化財に指定されました。
階段は窯の天井穴から粉状の石炭をくべる2階(窯の上)へ通じる。南北に2ヶ所に階段が設けられていたが北側は封鎖の状態だった。
修復工事が始まったのは2011年7月から。
2006年に前所有者の(株)シモレンが破産し、保存修理が中断したまま野木町に寄付された。老朽化に加えて修理中断で崩壊の危機にあり東日本大震災の影響も被ったが野木町が5億4千万円をかけて修復した。
調べていたら、朝日新聞の栃木県版に記事があった。
ヘルメットを着用してツアーへ。
傾斜のある外壁が圧巻。
第二号と書かれたプレート。16の焼成室には時計回りに番号がついている。
2階への傾斜路下に設けられたちょっと平たいアーチ。
複雑な隅の部分もきっちり積まれている。
第二号室の焼成室の内部天井。明るいところは見学用にライトが埋め込まれている。
煉瓦を焼くときはこの孔から粉状の石炭をくべた。
焼成中の空気の流れを示した図。16室のうち焼成過程にあるのは2室で、その前後で予熱と冷却が、さらにその先で搬入・搬出が行われていた。
こちらも深谷のホフマン窯と同じく、床面に排煙口が設けられていた。
1つの焼成室で1回あたり14000個の煉瓦が焼かれ、年間450万個を生産したそうだ。
再び外で解説を聞く。正面奥は隣の敷地の乗馬クラブの建物。
平面プランでは16角形になる。
下から帯飾りの位置まではイギリス積み、その上はフランス積み。
第十六室入口のアーチ。
アーチの下は斜めにすぼまって、さらに小さなアーチがある。
こちらの焼成室は当初のものがそのまま残している。よって鋼材でしっかり補強されてた。
連続焼成中には無かった「仕切壁」が煉瓦で組まれていた。
1階を回ったあとは2階へ。
煙突もしっかり補強されているが、東日本大震災により3度傾いている。
2階への斜路から見た外壁。
2階はすべてを見渡せる広大な空間になっていた。
複雑な木組みで支えられた屋根。
煙突は修復時に斜めに通した鋼鉄パイプで補強されている。
煙突内部が除ける穴。内部の煉瓦は高熱による変形がある。
粉炭を投入する孔。お椀のような蓋が整然と並ぶ。
粉炭を運んでいたトロッコの軌道。
こちらは中央の煙突への空気の流れを調整するダンパー。
中央部へ降りて見学することができた。
見学の様子をパノラマで。
2階を堪能して再び外へ。
ピントが柵に合ってしまったが、隣地では乗馬の練習が始まっていた。
アーチの上部が少し盛り上がっている箇所もあった。
少し痛々しくはあるが、この補強のおかげで安心して見学できる。3度傾いた状態にあるそうだ。
修復前の煙突は周囲からワイヤーを張って支えていた。その時のワイヤー根元の基礎も遺構として保存されてた。
見学は一時間弱で終了。煉瓦建物と煉瓦製造についてたっぷり学べるツアーだった。
オープン・ウィーク期間中は無料だったが、期間後も一般100円で常設公開されるそう(月曜休)
歴史的遺構としても貴重だが、建物自体の素晴らしさもあるので、実際に”体験”されることをぜひお勧めします。
見学路の脇に植えられたひまわり。野木町では毎年7月下旬にひまわりフェスティバルが開催され、20万本のひまわり畑が見られるとのことです。
ホフマン窯の場所は 野木町公式ホームページにあります。同サイトには詳細なパンフレットのpdfが添付されていました(下記)
http://www.town.nogi.lg.jp/scms/admin16814/data/doc/1460695921_doc_11_0.pdf
また、この施設の駐車場脇の小道は渡良瀬遊水地へ続いています。こちらもとても気持ちのよい場所でした。合わせて訪ねるとよいかと思いますが、下記にこの日訪ねた場所の一覧を貼っておきます。
野木町ボランティア支援センターれんが蔵 「きらり館」 栃木県野木町大字友沼