前回のつづき。
応接室の先には「残月の間」があった。
背中側の床の間の引いた写真を撮りそびれた。今回そのようなケースが多発したのは、ガイドの方の解説と会話に思わず夢中になってしまったことに因る。
座った位置で眺める庭。
奥行が一間ある床の間。京都の表千家の残月亭を写して残月床と呼ばれる。
安田家から寄贈された羽子板が飾られていた。3月には幅一杯にこの床の間のために特注された雛壇が飾られる。
春の七草も。
棟札が置かれている書院には、当初は炉が切ってあったとのこと。
襖の引手の見事な細工。引手のデザインも全部で23種類になる。
金銀砂子細工が残る襖。
畳が敷かれた縁側は一間ある。庭には戦時中に防空壕が掘られたが、畳を外すと入口が現れるそうだ。
その縁側の網代天井。
その下の電燈。下をくぐって次の「茶の間」へ。
寛いだ雰囲気が感じられた茶の間。
左右に開く「(関東)猫間障子」(地域によって区別の仕方は異なるようだが、雪見障子は小障子を上げ下げする猫間障子を雪見障子と呼ぶそう)
上に安田家の家族写真が飾られた襖を開けると意外なものが現れた。
お茶がたてられるよう、水屋がつくられていた。
茶の間を出た廊下の壁に電燈スイッチがまたあった。
裏庭に面した廊下は板張りだった。
茶の間と廊下を隔てた向かいには「台所」がある。
”アイランド式”の今風の流し台。
藤田当主の時代は土間でコックさんがいたが、昭和4年の安田当主の結婚時に板張りなどに改造された。大きな天窓は当初のもの。
片隅の凹みにはかつてボイラーがあった。
壁の配膳棚は折りたたみ式。これは便利。
上の段に氷を入れて使う冷蔵庫。毎朝氷屋さんが来て切立ての氷を冷蔵庫まで運んでいたそうだ。
「ツンドラ冷蔵庫」「1号」とあった。
床下には深さのある貯蔵庫も。
ボイラー跡の壁の裏は浴室シャワー。
もちろん檜の浴槽もある。
浴室天井。湯気を抜く棧は雫が落ちないように傾斜がつけられている。
”化粧室”から見た浴室。欄間の透かし彫りは「水の揺らぎ」の意匠。
下部の銅板張りの流しには元は蛇口があって女性の長い髪の洗髪に使われた。日本髪を結うのにびんつけ油を使うので、準備も元に戻すのも大仕事だった。
つづく。