墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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「百舌鳥・古市古墳群」魅力発信シンポジウム ~世界文化遺産登録に向けて~ 2015/2/2 @時事通信ホール(東銀座)

少し前になりますが、2/2の午後に古墳の本場、大阪府の堺市・羽曳野市・藤井寺市にまたがる百舌鳥・古市(もず・ふるいち)古墳群のシンポジウムが東京で開催されると知り、聴講しました。

古墳の面積日本一の大仙古墳(仁徳陵)を擁する百舌鳥古墳群、二位の誉田御廟山(応神陵)のある古市古墳群の双方を合わせて、2017年度の世界文化遺産登録を目指す活動の一環として開催されたようでした。

考古学の重鎮・白石太一郎先生の講演や宮内庁書陵部の”中の方”の生の声など、貴重な話を伺うことが出来ました。

・基調講演:「百舌鳥・古市古墳群の魅力」大阪府立近つ鳥博物館館長 白石太一郎氏

・講演:「陵墓管理の歴史」宮内庁書陵部陵墓課陵墓調査官 福尾正彦氏

・映像上映:「百舌鳥古墳群ー時を超えてー」

・パネルディスカッション:「百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録に向けて」

 コーディネーター:柳澤伊佐男氏(NHK解説委員)

 パネリスト:西村幸夫氏(日本イコモス国内委員会委員長)、白石太一郎氏、竹山修身氏(堺市長)

主催:堺市

共催:百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議(大阪府・堺市・羽曳野市・藤井寺市)

 

白石先生の話は、奈良盆地から河内平野に王墓が築かれた背景について東アジア視野での解説でしたが、「古墳には土木建築物としての構造的魅力がある」ことや「中学生のときに父に連れられて見た馬具や出土品の魅力」などのプライベートな語りもあって興味深く聴かせていただきました。

 

福尾調査官のお話では、陵墓を守ってきた歴史を初めて概観できました。歴史的に保存されてきた経緯があって今も残っていることを改めて実感しました。「ある陵墓職員の思い」として、以下のお話が印象的でしたのでレジュメから引用します。

「陵墓は、古代から現代までの皇室と国民とをつなぐ重要な文化的所産でもあり、皇室のみならず、国民一人一人がその遠い御祖先の御霊の静まる深い森に、心静かに参拝される場所でもあります。したがって、その管理に関しては、象徴天皇制の理解と本来、内包されるべき世界の平和や自然保護がその根底になくてはならないものです。私たち陵墓職員はこうした壊してはならない有形無形の国家的遺産を守るため、時には泥まみれになりながら奮闘しています。このことは、特定の団体や個人のためにではなく、すべての国民や国家の尊厳を未来に引き継ぐためのものであり、まことに地道な仕事です。そういった観点から、国民の皆様には陵墓への正しいご理解とご協力を切に願うものであります」

 

世界遺産となるためには、当然宮内庁の理解が必要となるでしょうが、宮内庁は「今まで通り祭祀ができるなら賛成である」という立場をとられているようで、シンポジウムで双方が出られる程の協力関係が築けているということは、実現可能性が高いのではと思いました。

 

シンポジウムでは、日本イコモス国内委員会(世界文化遺産の審査組織)の委員長の西村幸夫氏(東大先端科学技術センター所長)の話が面白かったです。

日本の世界文化遺産は昨年「富岡製糸場と絹産業遺産群」が追加、2015年候補で「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」、2016年候補で「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」及び「国立西洋美術館:ル・コルビュジエの建築作品でフランス推薦枠」が政府推薦枠で決まっている。今後の登録を待つ暫定リストは上記を含めて11件あるが、残りの8件のうち2017年登録の候補を狙うところが4件。政府推薦が受けられるのは1件のみで、百舌鳥・古市古墳群の競合は下記3件になるそうです。

・北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群

・宗像・沖ノ島と関連遺産群

・金を中心とする佐渡鉱山の遺産群

本番の世界遺産委員会の委員は半分は外交官なので、「わかりやすくその価値を説明できるか」がポイントになるそうですが、まずは国内予選を勝たないといけません。

(どれも魅力的な場所であり、登録される時期の違いではないかとのコメントもありましたが)

価値の説明の仕方としては、オリジナル性や文化や時代の代表性、文化交流の証、固有な土地利用のあり方、そこで起こったことがら(広島の例)などが挙げられるそうです。

百舌鳥・古市古墳群では、その大きさのみならず、形や大きさで身分を表しているその多様性などで提案されるようでした(事務局の方に何度もプレッシャーがかかっていました)

 

堺市の竹山市長からは熱いメッセージが発せられていましたが、ちょうどシンポジウムに合わせたように、古墳群周辺で建築物や屋上広告の規制も発表され、本気の取り組みが着々と進んでいる感じがしました。

現地で地上から拝観しても全容がわかりにくい「視認性」という点については、たとえば気球を使うなどのアイデアを提示されていました。

 

素人の自分としては、せめて前方部の林の中に目立たない空中回廊を設けて、「墳丘の上からの眺め」を得られるようにしてはいかがかなと思いますが、「静安と尊厳の保持」が前提である宮内庁の許可は難しいのでしょうね・・・

せめてスマホARの活用でしょうか。


 

会場ではバーチャルリアリティで作成した15分の映像も流され、行って見たい気持ちをかき立てられました。

 

ご講演いただいたみなさま、興味深いお話を聞かせていただき御礼申し上げます。大変勉強になりました。勝手に報告を書かせていただいて恐縮であり、当方の認識の誤り聞き違いもあると思いますので、当ブログを見る機会がありましたら、何なりとご指摘くだされば幸いです(コメント欄、非公開にもできます)

また準備いただいた主催者・関係者のみなさま、貴重な機会を設けていただき、誠にありがとうございました。

 

自分も古墳ファンのはしくれとして、古墳群の世界遺産登録を微力ながら応援させていただきたいと思います。まずは行かないと。

 

ご参考:古墳大きさランキング(日本全国版) 堺市