墳丘からの眺め

舌状台地の先端で、祖先の人々に思いを馳せる・・・

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第6回地球研東京セミナー 環境問題は昔からあった ~過去から見える未来~ @有楽町朝日ホール

少し前の1月16日に聞いた講演会。

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所という正式名称漢字28文字の団体、略すと「地球研」が主催。朝日新聞社他が後援。

地球研は「個別の大学では維持が困難な大規模な施設設備や膨大な資料・情報を、国内外の大学や研究機関の研究者に提供し、それを通じで効果的な共同研究を実施する研究機関」だそう。

13時から16時半まで、下記の4つの講演とパネルディスカッションがあった。

講演1:人口変動と環境制約 ー江戸システムを事例としてー 上智大学教授 鬼頭宏 氏

講演2:気候変動によって人間社会に何が起こったか ー弥生から近世までー 地球研教授 中塚武 氏

講演3:旧石器・縄文時代の環境変動と人々の生活の変化を考える 国立歴史民俗博物館準教授 工藤雄一郎氏

講演4:縄文人に主食はあったか ー食の多様性と環境問題 地球研教授 羽生淳子氏

 

以前、鬼頭先生著の人口に関する本を読み、縄文時代の人口の変動に興味があったので、そのパートを聴きたくて講演会の情報を得たときにすぐに申し込んだ。

ところが会場に着いたのは鬼頭先生の講演が終わろうとしている時間だった。残念だったが、「ひとつの文明システムが成熟して人口収容力が上限を迎えると社会は環境変動の影響を強く受けるようになるが、技術革新や新しい文明システムの導入で人口は再び増加する」という説が直接聞けたのはよかった。

 

最も興味深かったのは古気候学を専門とする中塚教授の話だった。

それは、木の年輪に含まれる「セルロース酸素同位体比」を調べると、1年単位での降水量の変動を復元することができるというもの。近畿から中部の檜の現生木、古建築材、考古遺物、埋没木などを調べ過去2000年の同位体比の波形をつないで1年単位で復元できているという(下の図)

つまり縄文時代まで1年単位での気候変動がわかると同時に、古代の木材でも一定期間の輪切りになっていてセルロース同位体比の波形をマッチングさせられれば、何年に刈られた木材かがわかることにもなる。

下の図の上部。地球研のサイトより転載。

総合地球環境学研究所 研究プロジェクト:高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索

すでに紀元前4600年前くらいまでの波形がわかっており、さらに遡り中とのこと。

つまり縄文時代の丸木舟からでも、何年(1年単位)に伐採されたかがわかってしまう。

そんなことまでわかるのか、と大変驚いた。

 

文書に残る歴史史料と照らし合わせても、飢饉や一揆、内乱、政権崩壊の時期と合うとのこと。

 

気候はもともと変動を繰り返しているのだが、人間社会は毎年の変動レベルには対応していても、「30~40年単位」の周期での大きな変動レベルになると対応できなくなって大きなインパクトになるのではという中塚先生の仮説が示唆に富んでいた。

気候に関するニュースで「数十年に一度の~」という表現を多く聞くようになっている昨今であるので、非常に気になる内容だった。

 

工藤先生からは、旧石器時代から縄文時代への環境変化のインパクトは絶大なものがあったが、それを乗り越えた我々の祖先についての話、羽生先生からは食べものの一様化は環境変化に脆弱なので、縄文時代のような食の多様性を維持しておかないと、飢えるリスクが高まるというお話だった(話を縮め過ぎていて恐縮です)

 

ご講演いただいた先生方、貴重な話を聞かせていただき御礼申し上げます。大変勉強になりました。勝手に報告を書かせていただいて恐縮であり、当方の認識の誤り聞き違いもあると思いますので、当ブログを見る機会がありましたら、何なりとご指摘くだされば幸いです(コメント欄、非公開にもできます)

また準備いただいた主催者・関係者のみなさま、貴重な機会を設けていただき、誠にありがとうございました。