1月24日の土曜日、市原市埋蔵文化財センターによる連続講座(平成26年度の8回目)に参加した。
縄文時代から奈良時代まで、地元の「著名な」題材で何度もテーマの深堀りが出来るのは、遺跡の宝庫の市原市国分寺台ならでは。
自分は今回で4度目の参加。家からは車で1時間程かかるが、それでも聴きたい、聴いて良かった内容ばかりだった。
今回は、最終講義の「上総国分尼寺」
自分が千葉県の遺跡に引かれていったその引力が加速したのは、2年前に上総国分尼寺の復元回廊を見たときだった。その解説が聞けるとあって、いつもより早く、開始50分位前に着いて最前列で聴講した。
下は、以前復元施設を訪ねた時のエントリ。
今回の講師は、市原市ふるさと文化課の牧野氏。以前は市原市埋蔵文化財調査センターに所属し、上総国分尼寺跡の発掘調査にも携わった方とのこと。
豊富な発掘時写真や復元の参考にした法隆寺や平城宮の建物写真、さまざまな図面(下総、武蔵、下野、常陸、相模国分尼寺等の図面も)をもとにした2時間の講義だった。
上総国分尼寺跡は1948年(昭和23年)に初めて学術調査され金堂跡を検出、その後の1970年前後の宅地開発の波に飲まれそうなところを寺域の3分の1を残すことができて、展示・復元施設が整っている。発掘調査は複数回実施されたが整理作業に時間がかかっており、報告書刊行はまだだそうだ。
上総国分寺、国分尼寺、国府推定置は周囲の台地上に分散していて、国分寺・国分尼寺は聖武天皇の詔(みことのり)どおり、「好所であること」つまり、人家に近すぎて俗臭の及ばないように、しかし人が集まるのに不便てもいけない、人家のない見晴らしのよい山野を選んだ結果であるとのことだった。
発掘調査でわかった上総国分尼寺の特色は下記の6点
・広大な寺域 ~総尼寺である大和法華寺(光明皇后が藤原不比等から相続した邸宅を尼寺にした場所)に匹敵
・極めて良く整っていた伽藍
・造営時期(仮伽藍跡がある)の違いが見られる遺構
・附属施設(政所院など)の全容がわかる
・建替えの変遷がわかる「残りのよい」遺構(畑だったので)
・墨書土器(法花寺)の文字資料で尼寺と確定できる
総尼寺の法華寺と同じ規模、ということは僧寺での東大寺と同規模の国分寺と同じ規模というくらいの関係になるのではないか。
なぜ、そのような大きな規模の尼寺が上総に造られたか、については、古東海道のルート上にあり古墳時代から姉崎古墳群などの前方後円墳が築かれていてヤマトとの関係が深かったこともあるが、牧野氏によれば、光明皇后や娘の孝謙天皇に仕えた女官(ないし・典侍?)が、上海上国(かみつうなかみのくに:現在の市原市の一部)の出身だったことによるとも考えられるそうだ。
また、発掘された井戸の話、写真も興味深かった。
寺域の北東側、少し谷が侵食した台地下では井戸跡が発掘され、中で腐らずに残っていた木製品、鉄斧まで見つかっている。
これは、当時の発掘調査担当者の宮本敬一氏が台地上で井戸跡が見つからいことを不自然に思い、すでに造成で埋まっていた谷の土をどけて調べた熱意と執念によるものだそうだ。
今回も、とても充実した講演会でした。来年度もぜひ継続を(できれば他市の郷土資料館での出張講演を)していただければ幸いです。国分寺台の遺跡は「市原市の」というより「千葉県の」「関東の」「日本の」宝ではないかと思います。
ご講演いただいた牧野様には、この場で恐縮ですが御礼申し上げます。大変勉強になりました。当方の認識の誤り聞き違いもあると思いますので、当ブログを見る機会がありましたら、何なりとご指摘くだされば幸いです(コメント欄、非公開にもできます)
また準備いただいた埋文センターのみなさま、貴重な機会を設けていただき、誠にありがとうございました。
市原市埋蔵文化財調査センターの展示スペース部分(土日祝休館。講演会実施日は開館)
国分尼寺跡の発掘調査時のパネル展示。右から造成のブルドーザーが迫る左下で調査が行われている。それを見ている親子。
入口近くに展示されていた縄文時代の土器。なんと面白い模様。バットマンのようでは。
西広貝塚出土の浅鉢形土器(縄文後期初期~前葉)
下はそのパネル解説より
ここに展示する土器は、国分寺台にある西広貝塚から出土したものです。器の形、文様、胎土などがいずれも同遺跡出土のものとは著しく異なり、また近隣遺跡にも類例がありません。そこで、日本列島全域を視野に入れて調べたところ、九州に分布する「阿高式」と言われる土器に類似することがわかりました。ただし、本物とは細部で異なる点もあることから、まだ阿高式と断定することはできません。しかし、いずれにしても近隣ものではないことは確かなことから、遠隔地との物資の交流を示す貴重な資料と言えるでしょう。
御座目浅間神社出土のシカとイノシシの埴輪。目が作り分けられている。
顔を合わせるのも4度目になった。