(※本エントリではグーグルマップとストリートビューの画像を16枚貼っているのでwifi環境でご覧ください)
著者は美術ジャーナリスト、ノンフィクション作家で、日本版「エスクァイア」の副編集長を務められた方。「盗まれたフェルメール」「フェルメール全点踏破の旅」など何冊も著書があります。
この本では、著者が15年以上にわたって訪れたヨーロッパとアメリカの邸宅美術館から選んだ15館が、収集の歴史や主な作品とともに、魅力的な写真で紹介されています。
選んだポイントは、特徴のあるコレクション、物語のあるコレクション、美しいセッティングの3点から。
ちなみにこちらで言う「邸宅美術館」とは、最初から美術館として建てられたものではなく、自宅に飾られていたコレクションを、自宅ごと公開したものを指すそうです。
邸宅美術館へ行くことは遠かったり不便であったりしますが、そこへ行けば、作家だけでなく「コレクターの気配の残る空間」で「コレクターの声に耳を傾けて彼らの感動を共有する」ことができ、その体験は「アート作品だけを鑑賞するよりもずっと大きい」と説かれています。
(以上は「はじめに」より)
実体験に沿った文章はもちろんのこと、写真(景山正夫氏、阿部寛氏)が素晴らしいです。各美術館の広報部門の協力を得た取材だったからこそ実現した館内の写真だと思いますが、2007年から2009年にかけて月刊「文藝春秋」の巻頭グラビアに掲載されたものだそうです。
紹介されている15の邸宅美術館は、アメリカに5ヶ所、ベルギーに3ヶ所、イタリアに3ヶ所、スイスに2ヶ所、フランスに2ヶ所。
自分はそのどれにも行ったことはないのですが、#地元発見伝の機能で、せめて門前に行った気分になれるのではと思い、15館のうちの8館を、気持ちの上で旅してみました。
「ぶらり地元旅」 #地元発見伝
・シャンティイ城コンデ美術館(フランス/シャンティイ)
「ベリー公のいとも豪華なる時禱書 byランブール兄弟、15世紀初頭」がありますが、著者が訪れたときは複製展示のみだったようです。
・ポルディ・ペッツォーリ美術館(イタリア/ミラノ)
通りから建物を。
この館の目玉作品である「ある貴婦人の肖像 by ポライウォーロ」は、この春(4/4~5/25)の渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムでの「ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館展」で来日していました。
開催概要&チケット情報 | ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション | Bunkamura
自分は昔々の学生時代、オランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館を訪れて「青いターバンの少女(真珠の耳飾の少女)」を見ようと思ったら「現在日本で展示中」とあって落胆したことがありました・・・
・マイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館(ベルギー/アントワープ)
中野孝次著「ブリューゲルへの旅」に出てくる「悪女フリート」が見られるそうです。
グーグルアースで見る限り、この普通のビルのようですが・・・
・ヴァン・ビューレン美術館(ベルギー/ブリュッセル)
高級住宅街にあるアール・デコ・スタイルの邸宅美術館だそうです。こちらにもブリューゲル、「イカロスの墜落」があります。
・ペギー・グッゲンハイム・コレクション(イタリア/ヴェネチア)
ストリート・ビューは、ベネチアでは船からの眺め(カナル・ビューでしょうか)になることを知りました。
恋人が1000人いたという、コレクター本人の話がとても面白かったです。
・ヴィラ&パンザ・コレクション(イタリア/ヴァレーゼ)
著者によれば「退廃的な貴族邸宅にコンセプチュアル・アート」があり、その「ミスマッチが美しく、痛快」と解説されています。ディビット・シンプソンやジェームズ・タレルの作品も見られるそうです。
・フィリップス・コレクション(アメリカ/ワシントンDC)
ルノアールの「舟遊びの昼食」などの印象派からアメリカのモダン・アートが見られ、「ロスコ・ルーム」があります。
・フリック・コレクション(アメリカ/ニューヨーク)
15の邸宅美術館の「トリ」がここでした。ストリート・ビューでは美術館内部の写真も撮れるようになっていました。 ここの展示はガラスパネルなしで、そのため10歳以下は入れないそうです。フェルメールが3点、ジョバンニ・ベリーニの「荒野の聖フランチェスコ」など、著者曰く「大美術館を凌駕する作品の質と気品」の館。
お金と時間があったら行きたいところばかりですが、そのハードルはかなり高いので、この本を手元に置いて「想像を膨らませたい」と思います。
地元の魅力を発見しよう!特別企画「地元発見伝」
2018/11修正