雨の中、上野の東京藝術大学美術館で開催中の「法隆寺 祈りとかたち」展に行った。
2014/6/22までの会期。この前に仙台、この後に新潟(7/5〜8/17)で開催。
東日本大震災復興祈念・新潟県中越地震復興10年と副題にある。
芸大には、その前身の東京美術学校の事実上の初代校長である岡倉天心との関連で、法隆寺に関連する資料、法隆寺を題材とする作品が多く残っており、合わせての展示。
目玉は、普段は法隆寺金堂の釈迦三尊像の左右に安置されている「毘沙門天像」と「吉祥天像」(上記のポスターにある2躯)
どちらも国宝で、制作年(平安時代、承暦2年:1078年)が「法隆寺金堂日記」によりわかる貴重なもの。
地下2階と、地上の3階の展示物を見て帰ろうとした。
帰る前に最初の写真、ポスターを撮っていて、そういえば金堂壁画は一部の模写しか見なかったなあと思ったら、別の棟での展示があった。
あやうく見逃すところだった。
芸大の門をはいって右側が上の美術館だが、左に「陳列館」があり、そこで「別品の祈り 法隆寺金堂壁画」の展示があった。(こちらも6/22まで。入館無料)
展示は1階と2階に分かれている。どちらも法隆寺金堂壁画の復元画だが、1階の方は少し動画化した、天蓋や衣が風で揺れるような8K映像。拡大映像なので細部までじっくり見られる。
そして2階の展示にびっくりした。
実物大の復元図が、ほぼ実際の位置関係の形で展示されていた。(しかも撮影OK)
法隆寺金堂壁画は7世紀末頃に描かれた、日本最古級の大規模な仏画群。
Wikipediaには「インド・アジャンターの石窟群の壁画、敦煌莫高窟の壁画などとともに、アジアの古代仏教絵画を代表する作品の1つであった」とある。
この建物と金堂とが同じサイズだったからこそできる展示。全く同じ広さではないが、柱や壁の部分で調整してあるそうで、画面サイズは全く同じだそうだ。
出入り口のところだけ壁が斜めになっているが、圧倒される。
実物は昭和24年の修復時におきた火災で「焼け残り」しかない。
また、実際の金堂では、中に釈迦三尊や毘沙門天・吉祥天などの像が並んでいるので、このように全体を見渡すことはできない。
先日の東博で見たキトラ古墳展でのデジタル機器を用いたバーチャルリアリティ画面もよかったが、こちらの展示では実物と同じ空間が再現されていて、リアリティ度が濃い。一瞬自分一人の時間帯があり、おそろしく贅沢な時間を過ごせた。
第6号壁 阿弥陀三尊二十五化生菩薩・童子図
艶かしい観音像。
観音像は、左右反転させると形が一致する、という説明画像も1階で見られた。
第1号壁 釈迦浄土図
第10号壁 薬師説法図
この展示は「藝大が培ってきた伝統的な模写とデジタル画像を高度にハイブリッドさせた特許技術によって全面復元」したそうだ。
素晴らしい。
復元技術がこれだけ発達すると、レプリカでも実物同様のパワーを持てるように思います。まさに日本のお家芸では。
恒久展示としたら海外からも沢山のお客さんを呼べるのではと思います。